オステオパシー とは?

アメリカのA.T.スティル博士(1829〜1917)によって考案された理学的治療法。オステオパシーの語源はギリシャ語で、「オステ(骨)」と「パシー(病理)」、すなわち骨を調節する療法。1874年に医学会に発表。身体が自己治療する理論に基づき、現在は徒手療法をはじめ、栄養(食事療法)、薬物療法、外科手術療法などを行う医療として確立している。

骨のみを調整する手技とは異なり、骨格などの運動器系、動脈・静脈やリンパなどの循環器系、脳脊髄液の循環を含む脳神経系など、解剖学的あるいは生理学的な広範囲の医学知識の元に、手を使って治療を加える。

本来オステオパシーは整骨という意味であるが、現在では骨や関節のみならず、身体全体の器官や組織全てを治療対象としているため、オステオパシーを整骨療法、整骨医学と翻訳するのは適切とは言えないだろう。アメリカオステオパシー学会でも、整骨医学ではなく、オステオパシーという呼び方を名称としてそのまま認定している。

余談ながらオステオパシーとカイロプラクティックとの関係は非常に近しいものがある。1898年設立されたDDパーマーのカイロプラクティック治療スクールの最初の卒業生はオステオパスと医者だった。またカイロプラクティックのテクニックの中にはオステオパシーのテクニックを取り入れたものが多く見られる。

オステオパシー医学

オステオパシー(Osteopathy)は1874年にアメリカミズーリ州の医師アンドリュー・テーラー・スティル(Andrew Taylor Still)によって創始された。

スティルは南北戦争の従軍医師であったが、二人の息子と養子を次々と髄膜炎によって亡くし、自分の無力さに嘆き、それから研究を重ね10年後の1874年にオステオパシーを創始した。

元々、スティルは人体の自然治癒力を阻害している原因は骨にあるとしていたが、後に筋肉やリンパ、内臓、神経、血管等の異常を治せば自然治癒力が高まると提唱した。

当初は西洋医学からは受け入れられなかったが、後に多くの人に支持され、1892年にアメリカン・スクール・オブ・オステオパシーがミズーリ州に設立され、1910年に医学認可を受けている。

日本にオステオパシーが入ってきた時期は特定できないが、明治から大正にかけて伝わったとされている。日本ではオステオパシーそのものの形ではなく、多種多様の徒主療法を包含する整体の一分野に形を変えて行われてきた。しかし、戦後オステオパシー医が来日するようになり、オステオパシーが独自の手技療法として広まるようになった。

オステオパシーとは、療法を指す用語ではない、オステオパシー医学という医療哲学のひとつの体系のことであると考える。

オステオパシーでは、次のような基本的理論のもとに治療を行う。

そのような機能障害(オステオパシーでは体性機能障害という)を、筋、関節、神経、血液(動脈・静脈)、リンパ、脳脊髄液、諸内臓などを総合的に観察した上で見つけ、矯正することにより、健康に導く。

また、治療法は、大きくわけて次の2つに分類される。

直接法
ある部位の機能障害を起こした時、その動きには一定の制限(バリア)が生じる。すなわち生理学的な限界点が異常に変化し、センターポイント(中心点)から近い状態になる。直接法はそのような病的限界の先に力学的動作を加えることにより、生理学的限界を正常に近づけようとするものである。
間接法
直接法とは逆に、より生理学的限界のセンターポイントより遠い方、すなわち、その部位が動きやすい方向に力を加え、誇張する。生理学的な限界が遠い方向は、オステオパシーでは機能障害という。例えば、骨が右に異常弯曲している状態では、骨は右に動きやすいが、左には動きにくい。動きやすい方は病的な方向であるので、右側機能障害という。間接法はその機能障害の方向にあえて動作を加えることにより、脳に異常な様態を認識させ、正常に戻す治癒力を発揮させて治そうとするものである。

各々の方法にはさまざまな手法があり、両者を兼ね備えたものもある。何れにせよ治療を行うのには、詳細な解剖学的知識、生理学的知識が必要であり、またその知識を触診をもって正確に判断し、その結果をもとに適切な治療を加える繊細な技量が必要である。従って当然、短い時間での習得は困難であり、少なくとも数千時間以上に及ぶ医学的教育と技術の習得、研鑽を持たないと、正しいオステオパシーにおける治療を行うことは困難であろう。

オステオパシーの基本手技
ファンクショナルテクニック(直接法 )制限に対して直接外力を加えることにより、可動性を正常に回復する方法である。そのように制限に対して直接アプローチすることから直接法と呼ばれる。てこの原理を応用して行う方法(力点と作用点間の長さにより短てこ法と長てこ法に分類)、瞬間に圧力を入れて行う高速低振幅法(スラスト法)、日本では古賀正秀が始めたので古賀技法とも呼ばれている、メンネルM.Dが始めた短い振幅を連続的に与える方法などがある。短時間で効果を現すが、解剖学的な要素や生理学的限界を感知せずに行うと、過誤を起こしやすい。
ファンクショナルテクニック(間接法)制限のない方法、すなわちオステオパシーで言う機能障害の方向に動かしていく。この手法では、機能障害を誇張させることによって脳神経にその状態を把握させ正常な状態に戻す信号を出すようにさせる。緩やかな手技が多く人体に過剰な刺激を与えないが、正確な手技を行わないと効果を得にくい。
ストレイン&カウンターストレイン緊張した筋と拮抗的な位置にある筋との間にアンバランスが生じると、痛みが生じる。ストレイン&カウンターストレインは、緊張した筋肉を見つけるために圧痛点Tender Point(発痛点Trigger Pointではない)を探し、その点をモニターしながら緊張部位を最大限にゆるめた位置で90秒程度維持し、緊張した筋肉と拮抗的な筋肉のバランスを取ることにより、痛みから解放させるもの。アメリカのジョーンズD.Oが開発した手法で大変普及している手法ではあるが、Tender Pointを捜すために優れた触診力が必要であり、また、最も筋が緊張をゆるめる位置を捜す触診力と解剖学的知識が必要である。
筋・筋膜リリース筋膜の緊張に対して、引き延ばすように直接法を行ったり、あるいは収縮させるように間接法的に行ったりしてバランスを整える手法であり、本来はマッサージの技法のひとつ。
筋エネルギーテクニック患者の力を利用しその力に抵抗しながら筋肉を収縮させ、筋や関節の動きを改善する方法。患者の体力にあわせて行えるため危険性の少ない手法である。PNFにおけるホールド・リラックス法と同じ。
スティルテクニックヴァン・バスカーフD.Oが、種々の資料を基にオステオパシー創始者であるスティル博士のテクニックを再現したテクニック。関節の解剖学的構造を考え、直接法と間接法の両方の特徴を持つ技法である。
リンパテクニックリンパマッサージと同じ。
内臓マニピュレーションフランスのジャン ピエール バラルD.O.、MRO(F)が始めた手法。内臓には呼吸に伴う動きと自発的な動きがあるが、それらを調整することにより内臓を円滑な機能にさせる。胸腹部に行う内臓体性反射を応用した刺激操作。
頭蓋オステオパシー硬膜に緊張があったり頭蓋骨に動きの制限があると脳脊髄液の流れに不調が現れ、その結果全身の神経機能に影響を及ぼし、身体機能が不調に陥る。また硬膜は大孔、第2頚椎、第2仙椎と連続性が見られ、頭蓋の動きの不調すなわち硬膜の緊張は、脊柱全体に影響を及ぼす。頭蓋オステオパシーでは、頭蓋・硬膜の変調を触診で見いだし調整することにより全身状態を改善させる。技術のない人が行うと効果がないばかりか、めまいや吐き気、頭痛、倦怠感、集中力欠如、うつ、様々な痛みなどをおこす可能性もある。この頭蓋オステオパシーを簡略化し家庭でも行えるようにしたのが、アプレジャー博士の頭蓋仙骨療法であるし、また、カイロプラクティック等にも影響を与えた。
頭蓋仙骨療法頭蓋骨から仙骨にかけての脳脊髄液の循環を調節するソフトな圧迫法。
靱帯性関節ストレイン法 頭蓋オステオパシーを開発したサザーランド博士、創始者のスティル博士に緒を発するといわれている。呼吸を応用する手法や間接法を主に直接法も含まれている。
クラシカルオステオパシー
アメリカにおいては、オステオパシーの歴史の中でさまざまな手法が開発されていったのに対し、イギリスでは、スティルに学んだリトルジョンが持ち帰った古典的な手法をほぼ今に伝えている。スティルが徹底して解剖学を重視したのに対し、リトルジョンは生理学的な考えのもとでの治療も必要であることを主張した。このイギリスで行われるオステオパシーの手法を、古典的手法を現代に伝えたものとして、一般的にクラシカルオステオパシーと呼ぶ。

ドクター オブ オステオパシー(D.O)

アメリカではオステオパスはDoctor of Osteopathy(D.O.)の学位・称号を有し、西洋医学医師(M.D.)と同様に正規の医師である。D.O.はすべての州で「医師免許」を認可されており、西洋医学医師(M.D.)と全く同等に「診断・外科手術・処方・投薬」等の全ての「医行為」が認められている。オステオパシー医学を学ぶ医学校も、西洋医学医師(M.D.)を輩出する医学校と同様に、大学院レベルに設置されており、通常は4年制である。しかしながら現在では専門の手技療法を医学教育の最終段階で多少学ぶ程度の様である。また、D.O.は臨床研修(レジデンシー)を経た後は、類似する分野である整形外科医のみならず、救急救命医・一般内科医等の専門を選ぶ事もできる。アメリカ軍の軍医の中にはD.O.の医師も多数存在している。因みに、カイロプラクターは、アメリカではドクター・オブ・カイロプラクティック(Doctor of Chiropractic)などと称されるが、認可していない州もあり、また、M.D、D.Oと違い医学博士ではない。

日本では法制化されていないが、理学療法(PT)、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の手技治療に応用させている。
スティルに学んだリトルジョンが広めたイギリスでは、オステオパシーの専門家は4年制のカレッジを卒業することが必要で療法士(セラピスト)として開業できる。多くの先進国では、米国オステオパシー協会の認定基準に従った一定以上の技術と医学知識を有するものを認定するものとしてMRO(Member of the Register of Osteopaths)という資格がある(前述のイギリスでは法に基づいた独自の資格がある)。
日本では、日本オステオパシー学会、全日本オステオパシー協会、関西オステオパシー協会が加盟する日本オステオパシー連合(JOF)が、民間資格であるが世界共通の技術、知識を有することを認めるものとして試験を行い、合格したものをMRO(J)(JはJapanの略)として認定している。

医業類似行為
あはき法では、「ん摩マッサージ指圧・り・ゅう・柔道整復」といった医業類似行為を行うためにはそれぞれ3年以上の専門教育機関を卒業し国家資格の免許を受けることが義務付けられており、「あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復」以外の医業類似行為については、「当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となる」とされている(厚生省医務局長通知)。
このように法制化された資格ではないため、無学者であってもオステオパス(オステオパシーの施術者)を名乗る事が出来る。また、オステオパシーと合わせ、高額の健康機器・食品を販売する行為もみられ、利用に際しては注意が必要である。
 
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