カイロプラクティックとは?

「カイロプラクティックって何?」と問われて、「あの!?骨をボキッと鳴らすやつ」と言うのが一般的なイメージだろうか。

カイロプラクティックの本場アメリカの状況を眺めてみると、その歴史の猥雑さと、技術,理論の多様性、混乱ぶりには驚かされる。それで本当は何?どれが本物?日本のカイロは?これらの疑問にすっきりした答えは返ってこない。

ちょうど、パソコンの理想のOSは?と問われても、現実に主流はこれだけど、理想は???と言った感じか。

カイロプラクティックの起源は、接骨師として学んび,また磁気治療師として仕事をしていたDDパーマー(DanielDavitPALMER)が、1895年9月18日,Harvey Lillardという耳の不自由な雑役夫の脊椎を調べると、椎骨が正常な位置から逸れて「歪められて」いた。これが彼の神経機能を妨害しているのだと考えたパーマーは、椎骨を正常な位置に「歪め直す」許可を求めて彼を説得した。そうしてアジャストメントを施すと,彼の聴力は回復した・・・ことに始まるとされる。

その後、DDパーマーは1897年,アイオワ州ダベンポートにカイロプラクティック治療スクール(Chiropractic School of Cure)を設立、 哲学(philosopy)、科学(science)、術(art)という3つの要素を柱とする「カイロプラクティック」が発展することとなる。

そして今や、数え上げればきりがないほど多くのブランド名があり、数百種類に及ぶカイロプラクティックテクニックがある。

カイロプラクティックの治療は、「神経伝達障害を伴うサブラクセーションを見つけ出し、アジャストメントによって除去する」ことである。
また、「脊椎分析を行った後,サプラクセーションを是正するために脊椎をアジャストする」
あるいは、「背部症状の診断に応じて,脊椎マニピュレーションなどの方法で脊椎の異常を治療する」
単に、「サプラクセーシヨンを診断,治療する」などととされる。

こうした何気ない表現の違いの中に、カイロプラクティックの多様な問題が潜んでいる。
(1)サブラクセーションとは、何なのか?
(2)方法は、アジャストメントなのか、スラストなのか、マニュピュレーションなのか、その他の治療方法なのか?

(3)対象は、脊椎なのか、それ以外のどこか、あるいは何かなのか?
(4)診断の方法は、脊椎分析なのか、それ以外なのか、触診だけなのか、機器を使うのか?
(5)目的は、症状の改善や痛みの軽減なのか、サブラクセーションの除去なのか?

それぞれのブランドがそれぞれに答えを求め、或いは離散集合し方法を展開する。

そして、カイロプラクティック治療は有効か?

各テクニックの支持者たちが定めた基準に従えば有効である。

しかし今のところ、臨床的有効性を評価するための世界的に通用する統一基準はない。

上記5つの疑問に対する一応の答えは以下の通りだが、カイロプラクティックの各ブランドはそれぞれの答えを示している。

(1)サプラクセーシヨン

整形外科学の定義は、「関節固有の生理的な範囲以上、あるいは生理的な方向以外に外力が加わると関節包や靭帯の一部が損傷され関節面の相互の位置関係が失われるが、なお一部接触を保っているものを亜脱臼(サプラクセーション)subluxation、完全に接触を失ったものを脱臼dislocationとよぶ」とされている。

「サプラクセーション」という言葉は,表面に現れる症状がどれほど異なっていても,原因はすべて同じであると解釈するカイロプラクターたちにとって,なくてはならない存在である.その定義は各テクニック様式によって大きく異なるが,「サプラクセーション」という用語を用いるほぼすべてのカイロプラクターは,脊椎の何らかの異常が健康を蝕む原因となっており,徒手的手法やその他の保存的治療法で治すことができると考えている.
 ある研究者によると,「サプラクセーション」という用語の歴史はヒポクラテスやガレノスの時代にまでさかのぼると言うが,英語の文献に初めて登場したのは1746年のことで,Joannes Henricus Hieronymiが使用した.当時の「サプラクセーション」の定義は,医学界で使用されるものに近く,関節に運動制限と痛みが認められ,他の関節と比較して変位している場合を意味していた.
 カイロプラクティックの世界で最初に「サプラクセーション」という言葉が使用されたのは,Smith,Langworthy,Paxonの共著による初めての教科書『Modernized Chiropractic(新しいカイロプラクティック)』の中でのことである.Smithらは,可動域が大きすぎたり,小さすぎたりする椎骨のことを「サプラクセーションを起こした椎骨」と表現した.この定義は,カイロプラクティックの父ともいうべきDDパーマーの定義とは異なる.DDパーマーは,完全には脱臼していないが,椎骨のアライメントが乱れた状態をサプラクセーションとよんだ.その後,DDパーマーの息子BJパーマーは,父の定義に神経伝達妨害の要素をつけ加えた.ミスアライメントという概念はその後,]線写真によるサプラクセーションの診断基準に取り込まれ,アメリカの医療保険制度であるメディケアやメデイケイドが医療費支払いの審査項目にしたが,2000年以降は審査項目から除外された.ここの主題からは逸脱するので詳細は割愛するが,Gattermanはその著書の中で,マニピュレーションで治療可能なサプラクセーションと,逆にマニピュレーションを禁忌とすべきサプラクセーションの鑑別が必要かどうかについて論じている.
 一方,カイロプラクターの中には「サプラクセーシヨン」という概念を否定して,この用語を診断に用いない人も多いが,カイロプラクティック大学協会に加盟する少なくとも十数校の学長たちは,1996年に「サプラクセーシヨン」の定義について次のような合意に達している.  

カイロプラクティックの目的は健康の維持と回復にあり,とりわけサプラクセーションを重視する.サプラクセーションとは,関節の機能的・構造的・病的変化が合体した状態のことで,神経系の統合性を損ない,臓器の機能や全身の健康状態にも影響を及ぼすことがある.サプラクセーシヨンは,もっとも信頼できる理論的および経験的エビデンスに基づいたカイロプラクティックの手法によって,評価,診断,管理されなければならない.
 このカイロプラクティック大学協会が示したパラダイムは,ACA,ICA,WFCといったいくつかの全国的組織でも採用されている.

(2)マニピュレーションとアジャストメント

カイロプラクティック・テクニックでは,「マニピュレーション」と「アジャストメント」を厳密に区別することが多い.要するに,神経伝達妨害を伴う分節のミスアライメントを矯正するときに,短いテコ(横突起や棘突起など)を使う場合がアジャスト的スラストとよばれ,一般に不特定の関節の可動域を長いテコを使って広げる場合がマニピュレーションとよばれる.ここでは,高速低振幅(HVLA)のスラストを「マニピュレーション」とよぶことにするが,単純にダイナミック・スラストと記述した部分もある.ダイナミック・スラストとは,自動運動や他動運動では到達できない傍生理学的範囲まで関節を動かす手技のことをいう.
 先に「アジャスト的スラスト」と表記したのは,マニピュレーションとは違って,アジャストメントの手技の中には少ししか力を加えない,あるいはほとんど力を加えないものがあるからである.人によっては,「神経伝達妨害」を是正したり,神経系を正常化させたりするのがアジャストメントで,マニピュレーションはおもに筋骨格系の構造に作用して,可動域を改善するためだけの手技だというだろう.加える力の強弱や,徒手と器具使用といった違いはあるが,最終的にアジャストメントに必要なのは,神経伝達妨害を消失させるためにサプラクセーションを是正することである.サプラクセーションに対するアジャストメントは,カイロプラクティック・テクニックの目玉であり,これを省くことになれば,カイロプラクティックらしい特色が何もなくなってしまう.
 「アジャストメント」という言葉を脊椎分節に対してのみ使用するカイロプラクターがいると思えば,環椎から蝶形骨,距骨にいたるまで,あらゆる関節にアジャストという言葉を平気で使うカイロプラクターもいる.さらに複雑なのは,痛みや症状を改善するために脊椎を「治療する」のではなく,サプラクセーシヨンを除く,または軽減するために脊椎を「アジャスト」あるいは「矯正」するのだというカイロプラクターがいることである.しかし一般的なレベルでは,カイロプラクティックのアジャストメントといえばHVLAスラスト(脊椎を「ポキッ」と鳴らす手技のこと)と考えてよく,多くの場合,脊椎に対して使用される.
 ここでは,広い意味で「アジャストメント」という用語を使用した.すなわち,特定の関節の機能障害や,サプラクセーションという表現で一括りにされる問題を解決するために用いられるすべての手技を,「アジャストメント」とよんでいる.アジャストの手技には,弱い力,またはやや強い力が用いられ,徒手のみの場合と器具を使用する場合がある.MeekerとHaldemannの近年の報告では,カイロプラクティック以外で使用される一般的なマニピュレーションとカイロプラクティック的マニピュレーションあるいはアジャストメントとの違いは,基本的にドクターの「意図」だと主張されている.ドクターによって「治療意図」が大きく異なるのは当然のことだが,その違いは,治療対象のサプラクセーション(または,それと同等の問題)の実態に由来することが多い.

(3)神経伝達妨害

多くのテクニック様式では,「イネイト・インテリジェンス(先天的知能)」という概念が重んじられるが,これをインスピレーションの源と尊ぶカイロプラクターもいれば,単なる迷信と笑うカイロプラクターもいる.この概念を最初に導入したのはDDパーマーである.もともと磁気治療師だった彼は,キリスト教科学や信仰療法,精神療法,形而上学,そしてオステオパシーなどにも関心をもち,それらの手法を取り入れていった.Morganによると,パーマーはさまざまな原理をミックスして「イネイト・インテリジェンス」という概念を生み出したらしい.パーマー自身の言葉を借りると「イネイト・インテリジェンス」とは,「この宇宙全体を満たす聡明なる知能が,1人1人の必要に応じて分け与えられたもの」だという.パーマーの考えかたによると「イネイト」とは「永遠の」という意味で,実体をもちながらも聖霊的な存在であることをうかがわせる.これに対して,心は,人間が生きている間しか存在できない.
 この神聖な表現をどこかのカイロプラクティック用語集の中でさがせば,いずれ劣らぬすぼらしい解説がいくつか見つかることだろう.しかし,専門的に「正確な」定義を示すよりも,なぜ異論のある表現を多くのカイロプラクターたちが使うのかについて,現実的な立場で考えてみたい.その第1の理由は,多くのテクニック様式において,治療の主たる目的が神経機能を妨げる要素をできるだけ取り除き,健康や治癒を脅かす問題を克服するための生体の自己回復能力を最大限引き出すことにあると解釈されていることだ.神経伝達妨害があると,筋や腺などの効果器官を支配する中枢神経系の働きが乱れると同時に,臓器や筋の働きを正しくコントロールするための末梢から中枢への情報伝達も妨げられる.つまり,生体をコントロールする仕組みが正しく機能するには,外界からの情報が正確に中枢へ伝わる必要があるのだ.
 「ドクターと患者は互いのイネイト・インテリジェンスによって,無言のうちに意思を伝え合うことができる」という解釈は,Van Ramptのデイレクショナル・ノンフォース・テクニックに認められる.DNFTでは,患者を腹臥位にさせておいて,ドクターが患者のイネイト・インテリジェンスに向かって,サプラクセーションがどこにあるのかを心の中で問いかける.そのあとでドクターは,両脚の長さの違いを調べるのである.これは,患者のイネイト・インテリジェンスとの対話の結果が,脚の長さの変化に現れると考えられているためだ.一方,生体エネルギー同調テクニック(BEST)の創始者であるMorterは,「イネイト・インテリジェンス」の定義の説明の中で,「卵子が受精した瞬間に組み込まれ,作動し始める知能の設計図は,確固たる証拠によって機能していることが裏づけられており,このプロセスに意識的思考を差し挟むことは不可能である」と述べている.
 「イネイト・インテリジェンス」という用語の使用に対する考えかたがカイロプラクタ一によって大きく異なり,テクニック間で温度差が認められることは,1998年の『Journal of the Canadian Chiropractic Association(JCCA,カナダ・カイロプラクティック協会誌)』にLon Morganが発表した論文への反響に非常によく表れている.Morganの論文は多くのカイロプラクターの怒りを買い,その後に発行されたJCAAには編集者への批判の手紙が何十通も掲載された.それらの手紙の内容はおおむね,イネイト・インテリジェンスの概念を擁護するとともに,Morgan個人を「反カイロプラクティック的存在」と激しく非難するものであった.もしカイロプラクターたちが,神経伝達妨害という用語の代わりに,より現代的なニューロパシー(神経障害)やラデイキュロバシー(神経根障害)といった用語を使用し始めても,さほど物議をかもすことはないはずだ.しかし,イネイト・インテリジェンスというやや古典的な用語には,カイロプラクティックの重要な理念,つまり生体機能を制御している神経系の障害を取り除いて,自然治癒力を回復させることがカイロプラクティックの使命だという理念の匂いが含まれているので,あっさりと捨て去ることができないのだろう.

(4)診断・評価法
レッグチェック(leg-checking)
寛骨が仙腸関節を軸に後方回旋すると言う仮説より,上骨盤筋の過緊張や軟部組織の機能的非対称が機能的短下肢を仮説の方が優位だが、短下肢=腸骨後方変位は短下肢=環椎サブラクセーションとも矛盾しないし、想像の域を出ない。LLI=leg-length inequality
スタティック・パルペーション(static palpation)
静止中間位で体性構造を評価する触診.
モーション・パルペーション(motion palpation)
体性構造の自動運動および他動運動を評価する手技。信頼度は低く,触診が治療手技の効果を発揮し再現度を低くしている可能性も有る.
フィクセーション(fixation)
椎骨が運動不能になった状態
リストリクション(restriction)
関節運動の制限
傍生理学的関節腔(paraphysiological joint space)
他動運動の限界で弾力のあるバリアが確認されたところから,さらにそれを超えて動かすことの出来る運動領域のこと。HVLAスラストによって到達できる。
筋力テスト
種々の臨床症状を持つ患者の筋強度を評価しながら、反射(reflex)を通じて患者の神経系(イネイト・インテリジェンンス)と直接会話するというAKやSOTの考え方。科学と傍科学のブレンド。
X線検査
レントゲン学とカイロプラクティックは、同じ1895年に誕生した.BJパーマーが脊柱のミスアライメントを科学的に診断する方法として1911年スパイノグラフィー(spinography)を紹介した.その後X線写真線引きなど分析評価法が発し展常用されるようになった.適用外や禁忌症を鑑別診断には有用であるが,リスティングを得るための分析的X線撮影の有効性には疑問が残る.
サーモグラフィー
体表面の温度を計測,記録および画像化する手法.体表面の温度には皮下の血流量が反映されており、それはすなわち神経系の状態を反映しているという説に基づく.Evinsのニューロ・カロメーター(neurocalometer)、Otto Shiernbeckは印刷可能なニューロ・カログラフ(neurocalogrph)を開発した.信頼度の点では,赤外線サーモグラフィーが勝るが,症状や障害の検出に対する有効性はいずれにせよ疑わしい.
インスツルメーション:その他の測定機器
TCM(Tissue Compliance Meter):組織硬さ計
STA(Soft Tissue Algometer):軟部組織痛覚計
GSR(Galvanic Skin Response):皮膚電気反応
NFT(Nerve Function Tests):筋電図,感覚誘発電位,神経電動速度,脳波
(5)診断と脊椎分析

一般的な医学とカイロプラクティックの違いを強調するために,次のように表現されることがある.医師が患者の状態を「診断」して,症状を「治療」するのに対し,カイロプラクターは,症状の有無にかかわらず脊椎を「分析」して,サプラクセーションを「発見」し「矯正」する.繰り返すが,私たちが使用する用語の意味は文章の前後関係によって変わることがある.なぜなら,すべてのテクニック様式が用語の使い分けにこだわっているとは限らないからであり,中には用語の使いかたにまったくこだわらないテクニックもある.私たちはこの中で「検査」,「診断」,「評価」といった見解の分かれる用語を多用することになるが,それはカイロプラクティック独特の理念を表現するためであり,特別な意図があってこれらの用語を使ったわけではないことを断っておきたい.

WCAの見解
2002年7月,世界カイロプラクティック連盟(theWorld Chiropractic Alliance;WCA)が,無症状の患者に対するカイロプラクティック的ケアについての見解を発表した.その要旨は,「無症状の」サプラクセーションが,サイレント・キラーとよばれる高血圧や]線写真でしか見つからないような虫歯と同じだというものである.WCAの報告によると,このような見解を出すことになったのは,ニューヨークで開業していたカイロプラクターが同年の初めに,症状のない患者を治療したことで停職処分を受けたからだと言う.その報告の一部を以下に引用する.
「カイロプラクティック・アジャストメントの必要性・妥当性は,症状あるいは医学的診断の有無によって決められるべきではなく,カイロプラクティックの審査委員会,保険会社,裁判所のいずれも,カイロプラクティック的ケアを行う必要条件として,症状の存在を要求するべきではない.」

カイロプラクティック的ケアに於いては、症状の有無にかかわらず脊椎を「分析」して,サプラクセーションを「発見」し「矯正」する事が、使命であるかのようだ。

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