手技療法の実施原則

手技療法を四肢や脊柱の症候群に実施する場合,施術上考慮すべき原則が少なくとも4つある.
1番目に,病相,すなわち急性期から慢性期のうちの,どの状態なのかを把握することである.
2番目に,施術に対する組織の反応性あるいは重症度を把握する.施術者が症候を効果的に施術し,悪化させるのを防ぐうえで,この2点は非常に重要である.
3番目に,試みの施術により得られた効果を認識することである.
4番目に,施術の主たる効果が,症候を緩和させるのか,準備的に作用するのか,矯正的作用なのか,あるいは維持的なのかを考慮する必要がある.

手技療法の対象

手技療法の対象となる組織には,@筋・筋膜,A関節・関節周囲の組織、B骨,@神経,D血管、などが挙げられる.しかし施術対象となるのはこれら神経筋骨格系や循環器系組織の外傷や疾病そのものではなく,それらによって生じる正常な機能の障害,すなわち機能異常(Dysfunction)である.そして障害や疼痛の原因となっている機能異常は,一つの組織にのみ生じていることは少なく,複数の組織に混在していることが多い.したがって評価で機能異常を起こしている組織を同定し,その原因とそれに寄与している因子を見出し、効率的な療法を行う必要がある.さらに患者に評価結果を理解してもらい,患者自ら治療に参加し再発を予防するように指導しなければならない.

施術手技的手技療法の視点と過程
1 理学的診断生体力学的、および機能的評価
2 治療
(1)痛みの除去
 @ 固定
  ・全体的:安静臥位(ベッド上での安静)
  ・局所的:コルセット,副子,キャスティング、テーピング
 A 温熱―水―電気療法 (T-H-E療法:Thermo-Hydro-Eledrotherapy)
 B 特別な手技
  ・徒手牽引:全肢位で,三次元的に
  ・振動,振動法(オッシレーション;Oscillations),その他
(2)運動性の増大
 @ 軟部組織モビライゼーション
  ・マッサージ:伝統的手技,結合織マッサージ,機能的マッサージ,横断的摩擦
  ・筋の自動的弛緩,例:保持―弛緩,相反抑制,その他
  ・他動的伸張:短縮した筋とそれに関連した結合組織に対して
 A 関節モビライゼーション
  ・関節の安静肢位における基本的な徒手的モビライゼーション
  ・関節の可動城中での,あらゆる肢位における高度な徒手的モビライゼーション
  ・並進的に押す手技(スラストテクニック;Thrusttechnique):連い速度で短い振幅の直線運動
 B 神経モビライゼーション
  ・硬膜,神経根、末梢神経の可動性を増加させる
 C 運動
  ・関節や軟部組織の可動性を増加させたり維持させる
(3)運動を制限する
 @ 他動的:コルセット,副子,キャスティング,テーピング
 A 自動的:固定運動
(4) 情報を提供,指導,そして運動
機能を増したり,傷害を補ったり,傷害を予防するための運動と教育.適切な人間工学や自己管理の技術について情報を与える.たとえば,医学的な運動療法,自動モビライゼーション,自動伸張法,腰痛教室など.
3.研究さまざまな施術方法,一つの施術方法,そして組み合わせた施術方法の効果を測定するための臨床的な試行.
評価・施術の臨床的試行過程

経験豊富な臨床家でも,患者に不適切な反応を起こさずにすべての施術を確信して行うことは不可能である.問診・視診・検査・問題点の分析と解釈・施術プログラムの作成・施術の実施・再評価・プログラムの検討および修正,という流れが一般的である.したがって,最初の施術では患者が耐えられると考えられるものよりも,強さや時間を短くして簡潔に行う.そして患者の反応を再評価し,その後の施術を進めていく.

手技療法を実施する場合,問診・視診・検査・問題点の分析と解釈・施術プログラムの作成・施術の実施・再評価・プログラムの検討および修正,という流れが一般的である.一方,患者自身の問題点に対する理解・施術プログラムに対する理解と自ら治療していく姿勢,という患者自身の施術へのかかわり方も重要である.このような患者と施術者の間で協力しながら意思を決定し,施術を行っていく過程を示しだのが次の図である.図の左側は施術者の過程,右側は患者の過程を表している.

coopration

患者と施術者間で協力して行われる意思決定の過程

施術の様式‐緩和的,準備的,矯正的,維持的

体性機能異常を施術する際の基本として,各施術セツションごとにその客観的,主観的効果を評価できなければならない.一度に多くの施術をすると,どの施術様式や手順が効果的で,どれが妨げになったかを見出すのが不可能になる.施術効果を再評価するために,施術様式や手順を次のように分類してみるとわかりやすい.基本的には,緩和的療法(Palliative modalities)は急性期で痛みが強い症状に用い,準備的療法(Preparatorymodalities)は亜急性期,やや遅い時期に行い,引き続いて関節の矯正的療法(Corrective procedure)を用いる.最後に施術効果を持続させるための維持的施術(Supportive treatment)を行う.下の表に示した分類と施術例はあくまでも便宜的なもので,たとえば温熱は緩和的に用いることもあれば,徒手的矯正を行う前の準備的療法として用いることもある.すなわち,施術を行う際には用いる療法や手枝の目的と効果を考慮し,再評価する必要かおる.

整形疾患の機能異常に対する施術様式・手順の分類
施術の分類施術例
緩和的療法安静,寒冷,温熱
準備的療マッサージ,振動法,TENS,指圧
法矯正的療法マニピュレーション,離開,運動療法,横断的摩擦,超音波
維持的療法腰痛教室,姿勢指導,運動療法,ホームプログラム
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