筋・筋膜性機能異常と疼痛

施術者が対象とする神経筋骨格系の機能異常のなかでも,筋・筋膜性の疼痛が多くみられる.筋肉が原因となっている疼痛には,@筋スパズム(Musdespasm),A緊張(Tension),B硬直(Stiffness)や筋力低下(Weakness)などの筋不全(Muscle deficiency),Cトリガーポイント(Trigger points)によるもの々どがある.

(1)筋スパズム(Muscle spasm)

筋スバズムは急性の発症で、運動を制限し、大変強い疼痛を伴う不随意収縮である.損傷した筋はおそらく触ると敏感に反応するが、必ずしも限局した部位が敏感になっているわけでもない.動かそうとすれば痛みが増強し,固定(安静)によって痛みは少なくとも一時的には減少する.また、筋スパズムは筋そのものや筋膜の損傷によっても起こるし,他の組織の損傷や機能異常の結果によっても起こる.そのため,特に急性期では一次的な原因を同定するのを困難にさせる.また,慢性化すると損傷組織は瘢痕治癒しても、筋スパズムや筋組織の短縮などの筋そのものの機能異常が残存し,痛みの悪循環を生じさせる原因となる.

(2)緊張(Tension)

現代のストレスの多い生活では,筋肉はすぐに行動に移せるよう本能的に緊張状態になっているが,実際には戦ったり逃げたりという反応が抑制されている.したがって,反応するはけ口がないため,特に座位仕事が中心の人々は,潰瘍や高血圧,肥満などの運動不足による疾患になってしまう.このような状態で起こる緊張性の疼痛、たとえば緊張性頭痛,頚部痛や背部痛は精神安定剤にただちに反応する.これに対して,筋スパズムは精神安定剤などの薬物療法には反応しない.ストレスによる筋の緊張はリラクセーション訓練によって十分緊張をとってから運動する必要がある.運動する前に十分なリラクセーションを行わないでストレッチングなどの運動を行うと,かえって筋の損傷を起こしてしまう.その結果,筋スパズムを起こしうる.もしスパズムが緊張を伴って起こっている場合,スパズムの施術を行う前に患者に精神安定剤による施術がなされていると非常に効果的である.したがって,理学療法を行う際には医師により精神安定剤による施術が行われているかどうか確認しておく必要がある.

(3)筋不全(Muscle deficiency)

筋は収縮と弛緩という2つの機能を持っている.このうち収縮機能に問題が生じると筋力低下(Weakness)をきたし,弛緩機能が低下すると筋は柔軟性を失い硬直(Stiffness)してくる.これら筋の弱化や,硬くなった状態が筋不全(Muscle deficiency) である.長期にわたって同一肢位に固定していると拘縮(Contracture)や筋の永久的な短縮を生じる.また,筋は疼痛性肢位や習慣性肢位をとっていても,すぐに短縮してしまう(適合性短縮).すると筋だけでなく,その部分にある関節の運動も制限される.弱くなった筋に過剰な負荷が加わったり,硬い筋が過剰に伸張されれば,痛みを引き起こす.そして,これらがまた新たな障害や痛みを引き起こす原因となる.筋は生理学的な弛緩する機能があって初めて他動的に伸張できるのであり,もし筋が最初に十分弛緩しなければ,伸張しても効果がなく,損傷さえ起こしうる.

(4)トリガーポイント(Trigger points)

筋筋膜性のトリガーポイントは非常に過敏な点で,骨格筋や筋膜内で硬いバンド状をなしている(図18,1-9).ここを圧迫すると痛みが生じると同時に,そこから離れた部位に特徴的な関連痛が生じ、過敏になり,そして交感神経症状が起こる.このような筋筋膜のトリガーポイントが原因となって痛みを生じさせるものを筋筋膜性症候群(Myofascial pain syndrome)という.

筋筋膜性トリガーポイントはその他の組織,たとえば,皮膚,脂肪組織,腱,関節包,靭帯,骨膜などに生じるトリガーポイントと区別する必要がある.このような組織のトリガーポイントが筋筋膜性トリガーポイントと違うのは,特徴的な関連痛を起こさないという点である.筋筋膜性トリガーポイントは、初期には筋への過剰な負荷による神経筋の機能異常によって起こる.活性化したトリガーポイントは,それに伴う病理学的変化を予測できず,徐々にさまざまな程度のジストロフィー様へと進行する.

  図-トリガーポイントの位置と痛みのパターン  マウスを乗せると拡大します
TrigerP1 TrigerP2
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