肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)
部位肩関節 症状可動域制限
原因疲労性・加齢変性 対処専門医の診断・代替医療

特に誘因なく肩の痛みが現れ,肩を上げられず,結髪・結帯が困難となる。癒着性関節包炎,凍結肩ともいう。50,60歳台に好発。五十肩は、ほうっておいても治りますが、痛みを抑えつつ、肩をできる範囲で動かすことで、痛みや動かしづらさなどの症状が早く治ることがあります。

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の病理

肩関節周囲炎とは、肩関節の炎症によって痛みが起きる病気です。その代表的なものに、いわゆる五十肩がありますが、肩関節の痛みは「石灰性腱板炎」や「腱板断裂」などからも起こります。石灰性腱板炎や腱板断裂なども、広い意味で肩関節周囲炎に含めることもありますが、最近は、肩関節に障害があり、はっきりした診断名がつけられる場合は、肩関節周囲炎から除外しています。そのため、肩関節周囲炎という場合、一般的には五十肩のことを指します。

原因
 肩関節の骨格は、「肩甲骨、上腕骨、鎖骨」の3つの骨によって構成されています。肩甲骨のくぼみには、上腕骨の骨頭がはまり込んでいますが、肩甲骨のくぼみが浅いため、上腕骨頭のはまり方が浅く、関節が不安で、脱臼しやすい状態にあります。そのため、肩甲骨の背中側に付いている棟上筋、棘下筋、小円筋と、肩甲骨の内側に付いている肩甲下筋が集合して、上腕骨頚部に付くことで、肩関節をしっかりと支えています。
 五十肩では、この筋肉と骨とを結びつける「腱板」や、骨と骨とを結びつける「靭帯」に炎症が起こります。また、肩甲下筋と棘上筋のすき問など、筋肉や腱板のすき間に炎症を生じることもあります。こうした炎症が痛みを引き起こし、悪化すると、肩関節の拘縮の原因にもなります。
 さらに、肩関節の周囲には、上腕骨頭を覆っている関節包や肩峰下滑液包などがあり、関節の動きを滑らかにする滑液をつくるとともに、クッションの働きをしています。五十肩の場合、これらの組織の弾力も失われ、炎症を起こします。
 このような肩関節の変化を起こす原因として、「加齢に伴う組織の変性、肩甲上神経が圧迫されて起こる障害、外傷、自律神経障害、血行障害、ホルモンバランスの変化」などが考えられています。しかし、今のところどの原因で起こるのかは、はっきりしていません。

肩関節 肩峰下滑液包
肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の症状

五十肩の多くは、ある日突然、肩関節に激しい痛みやしびれが現れることによって始まります。なかには、朝、目が覚めたら肩関節が痛くなっていたという患者さんもいます。痛みはかなり強く、腕を動かしたときはもちろんのこと、安静にしていても激しい痛みがあります。ひどい場合は、痛みで眠れなかったり、あるいは、痛みのために目を覚ますこともあるほどです。

痛みは、軽ければ1〜2か月、重い場合は3〜6か月ほどかけて軽減していきますが、その一方で、今度は、肩関節の動きが悪くなってきます。そのため、「肩や腕を上げる、回す」といった動作ができなくなってきます。

このような状態を「拘縮」といいますが、拘縮が起こってくると、日常生活にも支障が及ぶようになります。

しかし、五十肩のほとんどは、ほうっておいても自然に治っていきます。軽ければ半年程度、重い場合でも、1年〜1年半もすれば、痛みも拘縮も改善されて、以前と同じように動かすことができるようになります。

五十肩は、一度起こったら同じ側の肩には再発しない病気ですが、もう一方の肩関節に、新たに発症することはあります。左右同時に発症することはほとんどなく、一方の五十肩がよくなってから、もう一方に起こってくることがほとんどです。

五十肩は、40〜50歳代の人に多い病気で、体をあまり動かさない人に起こりやすいのが特徴です。また、女性に多いといわれますが、実際には、やや女性に多い程度で、男女差はほとんどないようです。

医療機関での診断

肩に痛みがある場合、肩関節の障害と、肩関節以外の障害の、両方を考える必要があります。例えば、肩関節の障害では、五十肩のほか、石灰性腱板炎腱板断裂などの可能性もあります。また、肺の先端にがんが発症した場合には、肩に激しい痛みを生じることがありますし、「狭心症、心筋梗塞、胆石症、頚椎の障害」などからも、肩に痛みが起こる場合があります。五十肩の診断では、こうしたほかの病気との鑑別が重要になります。

診察
 まず、問診が行われ、症状のほか、「痛みのある部位、きっかけ、どのようなときに痛むか」といったことについて、詳しく尋ねられます。また、実際に肩に触る触診や、肩を動かしながら診察する身体的な検査も行います。
 身体的な検査では、肩関節の動きや関節の動く範囲がわかりますし、問診では得られなかった痛みに関する情報、痛み以外の症状などがわかる場合もあります。

画像診断
 画像診断では、主にエックス線検査とMRT(磁気共鳴画像)検査が行われます。これらの検査は、肩関節やほかの部位に、障害の有無を確認するのが主要な目的です。エックス線検査では、腕を上げたり、腕を内側や外側に回すなど、いろいろ姿勢を変えて肩関節を撮影します。エックス線検査では、石灰性腱板炎や肺の異常などがわかりますし、MRIは、骨に囲まれた軟部組織の診断に有効で、腱板断裂などの診断に役立ちます。

こうした診察や画像診断が行われ、肩関節や体のほかの部位に、障害が認められない場合は、「五十肩」 と診断されます。

医療機関での保存的治療法

五十肩は、そのほとんどが自然に治っていきますが、なかには、なかなかよくならないものもあります。また、自己判断で治療を行った結果、かえって症状を悪化させたり、治療期間を長引かせてしまうこともあります。
五十肩を早く改善するには、適切な治療を受けることが大切です。五十肩の治療目的は、痛みを和らげることと、肩関節の動きをよくすることですが、その基本になるのが、「安静、薬物療法、温熱療法」などの保存療法です。

安静
 痛みの激しい時期には、痛みを和らげることが大切で、痛みをひどくするような激しい運動や、重いものを持ったり、無理な動作をすることは控えます。かといって、痛みが強くならない程度であれば、日常生活で、ある程度は、肩関節を動かすようにします。

薬物療法
 痛みがつらい場合は、薬物療法を行って痛みを和らげます。薬物療法には、大きく分けて消炎鎮痛薬の使用と、患部に薬を直接注射する方法があります。
 消炎鎮痛薬には多くの種類があるため、患者さんの体質や症状を考慮しながら、適切な薬を選びます。消炎鎮痛薬には、湿布などの外用薬のほか、内服薬や坐薬があります。
 患部への注射は、痛みを早く抑える効果があります。注射薬は、ステロイド薬やヒアルロン酸ナトリウムなどを用います。ステロイド薬は、強力な抗炎症作用がある反面、副作用にも注意が必要ですが、ヒアルロン酸ナトリウムは、本来滑液にある成分であり、注射しても副作用がありません。また、炎症を抑える作用もあるとの報告もあります。そのため最近は、ヒアルロン酸ナトリウムを用いるケースが増えてきているようです。ヒアルロン酸ナトリウムやステロイド薬の患部への注射は、過1回のペースで、3〜4回程度行います。

神経ブロック
 薬物療法を行っても、どうしても痛みが治まらない場合は、肩甲上切痕というポイントに局所麻酔薬を注射します。一時的に痛みを抑えることができます。

温熱療法
 関節の動きが悪くなる時期には、患部を温める温熱療法が効果的です。患部を温めることにより、血行がよくなり、痛みが和らぐとともに、筋肉がほぐれて、肩関節を動かしやすくなります。温熱療法では、一般にホットパック(ジェル状の温熱剤が入ったパック)や肩用のサポーター、カイロなどを用います。最近は、カイロを入れることのできるサポーターもあります。また、通常のサポーターに、面ファスナーをつけ、そこに使い捨てのカイロを貼りつける方法もあります。入浴して、全身をよく温めるのもよいでしょう。  患部の保温は大切で、特に夜間の冷えには注意する必要があります。

五十肩体操
50katakunren.jpg(112308 byte) 五十肩では、肩関節を動かさずにいると拘縮がひどくなって、ますます動かしにくくなっていきます。痛みが和らいできたら、「五十肩体操」を行って、肩関節を積極的に動かし、リハビリテーションに努めましょう。  五十肩体操では、段階を追って、肩関節を動かせる範囲を徐々に広げていくことが肝心です。また、無理をせずに、痛みが強くならない程度に行うことです。 五十肩体操を、毎日繰り返し行うことで、肩関節の動きが滑らかになるとともに、血行がよくなり、筋肉が徐々にほぐれていきます。 なお、五十肩体操は、必ず五十肩と診断されてから、正しいやり方を医療機関で指導を受けて行うとよいでしょう。

五十肩の多くは、こうした保存療法を行うことによって、症状が改善されていきます。しかし、治療を開始して半年〜1年以上たっても、症状が軽くならない場合や、痛みなどがひどくて、日常生活に支障を来すような場合は、手術を行うこともあります。

医療機関での手術療法

五十肩が慢性的になると、肩甲下筋と棘上筋の腱板のすき間の炎症により、組織が瘢痕化して、すき間が狭くなります。手術では、この療痕化した部分を切り離して、肩甲下筋と棘上筋の腱板の間に、十分なすき間をつくることで、痛みが軽くなり、肩関節の動きもよくなります。手術には入院が必要で、全身麻酔下で行います。実際に、五十肩で手術をするケースは、あまり多いものではありません。

五十肩の治療で、注意したいのが「糖尿病」です。糖尿病の人が五十肩を起こすと、症状がなかなか軽くならず、治療が長引く傾向があります。しかし、血糖を適正にコントロールすることによって、症状の改善や、治療期間の短縮が期待できます。糖尿病の人は、五十肩の治療を行うとともに、糖尿病の治療と生活管理に努めることが大切です。

日常生活での対処法

肩をねじるなど痛みが起こる動作を避ける  五十肩では、日常生活でつらい思いをすることもあります。そのような場合は、次のような対策を講じて、痛みの軽減を図ります。

夜間痛があるときは:激しい痛みのために、夜眠れない場合は、クッションや座布団を二つ折りにして、悪いほうの肩からひじにかけて敷き、肩関節の負担を少なくします。さらに、クッションを腕に抱えて寝ると、痛みがより和らぎます。

服を着替えるときは:肩や腕を上げたり、後ろに回す動作をすると痛みが強まるため、衣服の着替えがつらくなります。服を着るときは痛いほうの腕から袖を通し、脱ぐときは楽なほうから脱ぐと、あまり痛くなく着脱ができます。セーターやシャツ、パジャマなどを前開きのものにすると、肩関節にあまり負担をかけずに、着替えられます。逆に、帯を結んだり、エプロンを結ぶ動作は非常につらいので、背中や腰で、ひもやファスナーなどを使う衣服は、避けたほうがよいでしょう。

気分転換のために、温泉などに出かけたり、散策するのもよいと思います。

肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)の予防法

五十肩は、誰にでも起こる可能性のある病気ですが、生活習慣に注意することで、予防できます。五十肩の予防には、「ふだんから適度に肩を動かす、肩を冷やさないようにする」の2点を心がけることです。

五十肩は、体を動かすことの少ない人に起こりやすい病気ですから、中高年の人は五十肩体操やテレビ:ラジオ体操などを行い、意識して体を動かすようにすることです。また、仕事の合間に、背中を伸ばしたり、体を動かすのも、五十肩の予防に効果があります。
 肩の保温で、注意したいのが冷房です。冷房で長時間肩を冷やすと、血行が悪くなり、筋肉が硬くなるので、好ましくありません。冷房を使いすぎないようにし、冷房の効いているところでは、長袖のシャツを着用したり、カーディガンを羽織るなどして、全身の保温に努めるようにしましょう。
 そのほか、ストレスが症状を悪化させることもあるので、日ごろから心身のリフレッシュに努めるなど、ふだんの生活のなかで前向きな予防を心がけることが大切です。

[トップ][戻る]