脊髄腫瘍,脊髄動静脈奇形
部位脊柱 症状痙性麻痺
原因加齢変性 対処専門医の診断

脊柱管内にできる腫瘍。脊髄や馬尾などの神経を圧迫して症状が現れます。 緩徐〜急速進行性の痙性麻痺を認め,原因らしい脊椎の骨変化がみられなければMR画像をとって調べます。時に排尿障害が起こります。

脊髄腫瘍の病理

脊柱管内に発生した腫瘍を脊髄腫瘍と総称します。脊髄腫瘍は臨床的に腫瘍と脊髄,あるいは硬膜との位置関係から,硬膜外腫瘍,硬膜内髄外腫瘍および髄内腫瘍に大別されます。また特異な形態を示すものとして,脊柱管の内外,椎間孔にまたがる砂時計のような形をした脊髄腫瘍を,脊髄砂時計腫dumbbel1−typed tumorと総称します。


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また脊髄腫瘍はその発生部位や形態,腫瘍の種類によって手術方法および予後などが異なるので,治療前にそれらを判定することが臨床上不可欠です。脊髄腫瘍のほとんどは手術療法の適応となります。手術の際に不用意な広範囲椎弓切除を行うと,高率に術後脊柱変形をきたすことから厳に戒めるべきです。できるだけ後方支持組織を温存するために,椎弓形成術,片側椎弓切除術などを行うべきです。

  1. 硬膜外腫瘍 extraduraltumor
    全脊髄腫瘍の約11%を占めます。腫瘍は硬膜外腔に存在するので,脊髄は硬膜の外から圧迫を受ける形となります。続発性の症例が多数を占め,乳癌や肺癌,あるいは悪性リンパ腫の転移であることが多い。原発性腫瘍では,神経鞘腫や脂肪腫などがあます。
  2. 硬膜内髄外腫瘍 intradural-extramedu11ary tumor
    腫瘍は硬膜内で脊髄の外,すなわち硬膜下腔またはくも膜下腔に存在するもので,脊髄を外から圧迫して脊髄障害を引き起こします。全脊髄腫瘍の約65%を占めます。腫瘍の種類としては,大部分が神経鞘腫neurinomaまたは髄膜腫meningiomaです。その他には神経線維腫neurofibroma,真性の腫瘍ではないがくも膜嚢腫arachnoid cyst,脊髄動静脈奇形 arterio-venous malformationなどがあります。いずれも,脊髄の背側〜側方に偏在することが多く,硬膜を切除する。神経鞘腫はSchwann細胞(大部分が後根)から発生するため摘出は比較的容易ですが、髄膜腫は硬膜内層またはperiradicular sheathから発生するため摘出に際し、発生母体である硬膜ごとに摘出することが再発防止のために重要です。
  3. 髄内腫瘍 intramedullary tumor
    脊髄実質内に発生した腫瘍です。したがって脊髄は内から外へ向けて腫れ上がるように圧迫され,腫大する。上衣腫ependymoma,星状細胞腫astrocytoma,血管芽腫hemangioblastoma,海綿状血管腫cavernous hemangiomaなどがあます。腫瘍切除は脊髄に切開を加える必要があり,完全摘出は容易ではなく,特に星状細胞腫の完全摘出率はきわめて困難です。
馬尾腫瘍:これらの脊髄腫瘍のうち,腰椎部すなわち馬尾部に存在する腫瘍を馬尾腫瘍と総称します。その多くは神経鞘腫ですが,脊髄の延長である終糸filum terminaleから発生したものは上衣腫myxopapillary ependymomaであることが多い。初期には神経根刺激症状(神経根性下肢痛)が主訴となり,進行期では馬尾圧迫症状による下肢知覚・運動障害が,さらに進むと排尿障害(S2,3根障害)が出現してきます。完全切除が必要であります。

脊髄腫瘍の症状
  1. 脊髄腫瘍による脊髄圧迫の形式と臨床症状との進展との関係:これは大変重要であり,これを理解するためには脊髄のおよその機能解剖を知らなくてはならない.すなわち,知覚上行路(塵埋脊髄視床路-主に触覚の上行路,外側脊髄視床墜-主に温感と早い痛みの感覚の上行路),後索(主に遅い痛みの感覚,位置覚,運動覚などの上行路),および外側皮質脊髄路(錐体路ともいう=上位運動ニューロンの下行路)はすべて分節支配別に層状配列をなしています。脊髄実質の機能的,解剖学的障害は腫瘍に最も近いところから生じることを考えれば,症状の進行様相が理解できます。
  2. 神経根刺激症状と脊髄圧迫症状:本症での臨床症状は,初期の神経根刺激症状(根性痛)と進行性の脊髄圧迫症状に代表されます。
  3. @神経根刺激症状(根性痛)と叩打痛:
    初期症状としての根性痛は必ずしもすべての脊髄腰癌症例に現れるものではないが,重要です。程度は様々で,むしろ明瞭に記憶されない程度の一過性の疼痛である場合が多い。
    頚髄腫瘍では,主に頚肩腕への放散痛,胸髄腫瘍では側胸部痛,上腹部痛などを自覚し,その後に脊髄症状が発現することが多い。腰仙髄の腫瘍または馬尾腫瘍では下肢痛は明瞭であることが多く,腰椎椎間板ヘルニアと誤診されることもある。
    これら根性痛については,部位,広がりを明確に質問することによって;腫瘍がおおよそどの高位にあるか,左側か右側かを推察することができます。腫瘍が存在する背部を叩打すると,それ以遠に不快な放散痛を再現することがある。
    A脊髄圧迫症状:
    脊髄高位(頚髄,胸髄)に発生した脊髄腫瘍は,まず錐体路障害にもとづく下肢癌性麻痺,知覚上行路の障害による表在性知覚障害あるいは深部知覚の異常をきたし,病勢が進むと完全弛緩性脊髄横断麻痺になる可能性を秘めています。これらの症状がどこから始まり,どのように進展したかによって,脊髄外からの圧迫(髄外腫瘍)か脊髄内からの圧迫(髄内腫瘍)かを,およそ知ることができます。髄内腫瘍,および排尿中枢の存在する脊髄円錐部の腫瘍では,比較的早期から膀胱直腸障害が発現しやすい。
医療機関での診断

神経学的に分析し,その所見から障害髄節を判定するのが基本です。単純]線前後像では腫瘍存在高位に一致した椎弓根間距離の拡大や椎弓根の侵蝕erosion,側面像で椎体後面の圧痕scalloping,さらに斜位像では砂時計腫の場合,椎間孔の拡大がみられることがある。近年ではMRIは脊髄腫瘍の中心的画像検査であり,ミエログラフィー以上に重要で,その局在から組織診断までをある程度可能にしています。
MRIのTlまたはT2強調像でほとんどの腫瘍は描出されるが,さらにGadolinium-enhance(ガドリニウム造影剤を静注してのMRI撮像)を行うと,腫瘍はより鮮明に描出されることが多い。
硬膜内髄外腫歩妥高頻度にみられる神経鞘腫と髄膜腫の画像上の鑑別診断のポイントは,神経鞘腫は髄膜腫と比較して硬膜からの立ち上がりが鋭で,造影剤による増強効果が強く嚢胞を伴うことが多いことである。
脊髄腫瘍が存在する部位では,くも膜下腔は種々の程度に閉塞して脊髄液の還流が障害されます。このため,本症では脊髄腔穿刺を行うと脊髄腔閉塞徴候(Queckenstedt陽性,脊髄液黄変xanthochromia,蛋白質増加およびグロブリン反応としてのPandy陽性やNonne-Apelt陽性)を示す。また,ミエログラフィーを実施すると,育髄腫瘍の横断面での局在によって一定の特徴ある停留像をとらえることができます。

医療機関での手術療法

脊髄腫瘍のほとんどは放射線治療の効果が低く,また脊髄への放射線障害radiation myelO-pathyの危険性があるので,放射線療法は髄内腫瘍の一部の症例以外(星状細胞腫,部分摘出後の上衣腫)は行われません。したがって脊髄腫瘍の治療は外科的に腫瘍を摘出することが原則です。マイクロサージャリーの手技向上と術中脊髄モニタリングの導入により腫瘍摘出時の安全性は向上しましたが,髄内腫瘍はいうまでもなく脊髄腫瘍のすべてにおいて,術後の神経機能障害や完全摘出の可能性(限界)などについて十分に術前に説明を受け,患者や家族の理解を深めておく必要があります。

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