変形性脊椎症・腰椎症(腰部脊椎症)

腰椎の骨や椎間板などに変形などが起こって、慢性的に腰が痛い腰椎症(変形性腰椎症・腰部椎間板症)などは、中高年の腰痛の主な原因です。老化は誰にでも起こりますが、誰もに症状が出るとは限りません。症状がつらい場合は治療も必要になります。椎間板や椎間関節の狭小化,骨棘形成などの]線所見が重要です。

部位腰殿部 症状痛み
原因加齢変性 対処専門医の診断
変形性脊椎症・腰部脊椎症の病理

年をとると徐々に全身の機能が低下していきますが、それは背骨も同じです。脊柱の椎骨や椎間板にさまざまな変性や変形が生じてきます。これは誰にでも起こる老化現象で、それによって必ずしも症状が引き起こされるとは限りませんが、なかにはこうした変化によって、腰痛などの症状が現れる場合もあります。これが「腰部脊椎症」です。


腰椎椎間板の加齢変性         左クリック=拡大:右クリック=縮小:ドラッグ=移動
  1. 正常な椎間板で脊柱の機能は正常
  2. 椎間板変性に陥ると椎間板間隙は狭くなり、同時に椎間関節のかみ合いを狂わせる
  3. (上)ときに椎間板ヘルニアが起こる:(下)ときに脊椎すべりが起こる
  4. 変性が進むと椎骨の所々に骨棘が形成され、椎間関節も塊状に変形肥大する。これは脊柱を安定化させるための適応である。その結果、脊柱管は狭くなる。脊柱管狭窄を伴う変形性脊椎症(変性腰部脊柱管狭窄症)である
加齢による背骨の変化(変性)
椎間板の変性・変形 老化によって、椎間板の髄核から水分が失われてつぶれ、クッションとしての役目を十分に果たさなくなる。さらに、髄核が飛び出して椎間板ヘルニアになると、神経を圧迫して痛みを引き起こしやすい。
椎骨の変形 椎体同士がぶつかったり、椎間関節がすり減ったりすると、骨の形成が異常に促されて「骨棘」と呼ばれる出っぱりができたりして椎骨が変形してくる。骨棘が神経を圧迫すると痛みなどを起こす原因になる。
椎間関節と支持組織の変化 椎間板の変性・変形は、椎間関節や靭帯、関節包の負担を大きくすることになる。その結果、本来は隙間がある椎間関節の間が狭くなって摩耗したり、骨棘ができたりして変形する。また、それに伴って関節が炎症を起こしたりすることがある。
脊柱管の変形 つぶれた椎間板がせり出したり、椎骨や椎間関節の変形、あるいは、椎間関節がゆるんで椎骨がずれたりする(すべり症)と、脊随・馬尾の通る脊柱管や神経の出る椎間孔が狭くなって痛みなどを起こしやすくなる。

椎骨や椎間板の老化は、脊柱のどの部分でも起こりますが、症状が現れやすいのは腰部です。これは、腰部は脊柱の中でも動く範囲が広く、脊柱の下部にあるため、大きな重量が常にかかることが原因となっています。つまり、脊柱の中でも腰部は特に負担が大きいため、椎骨や椎間板が障害されやすいのです。
 こうした老化や長年に及ぶ負荷で、最も変化が起こりやすいのが椎間板です。椎間板は中心に水分を含んだゼリー状の「髄核」があり、周囲は「線維輪」という丈夫な組織でできています。その役割は、椎骨と椎骨の間にあって背骨の動きを助けたり、骨に加わる衝撃を吸収するクッションの働きをすることです。ところが、加齢によって椎間板の水分が徐々に失われて変性してくると、カが加わることによってつぶれたり、変形します。これを「腰部椎間板変性」といいます。その結果、椎間板が脊柱管のほうにせり出してきて、脊柱管の中を通っている神経を圧迫するようになります。このような変性が軽い状態を、特に「腰部椎間板症」ということもあります。スポーツや肉体労働を続けてきた人には、比較的早期から起こります。
 椎間板がつぶれた状態になると、上下の椎骨をつないでいる椎間関節にも、加齢による影響が現れやすくなります。椎間板がつぶれることで椎間関節に負担が増し、関節の接触面が摩耗するためです。
 関節面の摩耗が起きると、その部分を補うために骨組織の生成が活発になり、それまではなかった骨の出っ張りができます。これを「骨棘」といい、棘のように突き出しているために脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されるようになります。
 このように腰部脊椎症では脊柱管が狭くなることが多く、「腰部脊柱管狭窄症」を招く代表的な病気とされています。
 そのほか、老化によって椎間板や椎間関節にゆるみが生じると、椎骨を支えきれずにすべってしまう「変性すべり症」と呼ばれる状態になることもあります。
 腰部脊椎症は、性別には関係なく、早ければ30歳代から発症し、年齢が高くなるにつれて発症しやすくなります。発症率は50歳代でピークとなり、60歳代以降はそれが続きます。

変形性脊椎症・腰部脊椎症の症状
動作を始めるときに痛みが強く出るのが特徴 椎間板や椎骨の老化現象によって、何らかの症状が引き起こされているのが腰部脊椎症です。症状には、次のようなものがあります。

慢性腰痛
 腰部脊椎症で現れる最も代表的な症状が「腰痛」です。慢性再発性(急性症状を繰り返す)の場合と、持続性の場合とがあります。
 起床時に動き出すときや、座っていた状態から立ち上がるときなど、動作の開始時に痛みが強く現れ、動いているうちに軽くなるのが特徴です。
 また、腰痛があることによって、結果的に「腰椎の可動域制限」が起こります。加齢とともに腰椎の可動域(動かせる範囲)が狭くなるのは当然で、生理的な現象ですが、腰部脊椎症の場合には、痛みがあるためにこれ以上動かせない″という状態が起きてきます。
 なお、もともと脊柱管が狭い人は、脊柱管に老化による変化が起こることで、「下肢の痛み、しびれ、運動障害(筋力低下)」などを伴うことがあります。こうなると腰部脊柱管狭窄といえます。
脊柱変形
 椎間板が左右非対称に変形することで、「脊柱側弯」が起きることがあります。また、椎骨が変形することで、本来は軽く前弯(前方凸の弯曲)している腰椎に、「後弯(後方凸の弯曲)」が起きたりします。いわゆる腰曲がり″の状態です。
 ただし、これらは加齢に伴う自然な変化で、たとえ腰が曲がっていても、それによって痛みなどが必ず起きるとは限りません。痛みやしびれがある場合にのみ、問題となります。

腰痛以外の症状もみられますが、その多くはどの部分に変性・変形が起こっているかによって異なります。下肢の痛みやしびれなどの神経症状が現れた場合は、原因によって椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断されることもあります。椎骨のずれも変性すべり症と診断され、腰椎症とは違う病名で呼ばれることもあります。「腰椎症」とは、変性や変形が原因となっている腰椎の病気の給称だということを知っておきましょう。

医療機関での診断

老化によって腰椎や椎間板にある程度の変形や変性が起こるのは当然のことです。したがって、画像検査で変形・変性があるからといって、誰もが「腰椎症」と診断されるわけではありません。診断の決め手となるのは、何らかの症状があるという点です。そのため、診断の際に重要なのは、どのような症状があるかということと、体にどんな変化。異常が見られるかという身体所見です。
 問診では、腰痛や下肢の痛み、しびれなど、どんな症状が現れていて、日常の動作で制限されて困っているかなど、体がどんな状態にあるかが重要な情報となります。
 また、身体所見では脊柱の可動域(動かせる範囲)や、どんなふうに動いたときに痛みやしびれが起こるかを調べたり、感覚や腱反射などの神経の検査を行います。さらに、筋肉の状態を調べるために触診も行われます。腰が痛い人は、おしりの筋肉が萎縮していることがあるからです。
 画像検査の目的は、患者さんが訴える症状と身体所見の裏付けのためであり、ほかの重大な病気を見逃さないためです。画像上の変性や変形が、症状や身体所見に一致する場合に「腰椎症」と診断されます。

いろいろな病名?? 実は同じ病気を指している!!
 「腰椎症」に含まれる病気でも、患者さんに違う病名が告げられることがあります。「腰部脊椎症」も同じ病気を指しています。
 病気が起こった要因から、椎間板変性が原因の場合には「椎間板症」、椎間関節に原因がある場合は「椎間関節症」、加齢に伴う脊椎の変形が原因の場合は「変形性脊椎症」と呼ばれることもあります。
 椎間板症が腰に起きているため「腰部椎間板症」といわれたり、腰部に起きた変形性脊椎症ということで、「変形性腰椎症」という病名もよく使われます。
 実際には、高齢になるほど、椎間板にも椎間関節にも椎骨自体にも加齢変化が進み、こうした区別はつけにくくなります。

医療機関での保存的治療法

治療の基本となるのは、痛みを改善するための対症療法です。対症療法をしても、変性や変形が元どおりに治るわけではありません。しかし、高齢者の変形性腰椎症などでは老化が最大の要因なので、手術が必要となるようなケースはあまりありません。手術をするよりも対症療法で痛みをとって、日常生活に支障をきたさないようにすることでほとんどは問題ないからです。
 一方、痛みなどの症状が強く、それによって日常生活に支障を来すような場合には、治療が必要になります。
 医療機関での治療の中心となるのは薬物療法です。非ステロイド性消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などで痛みを軽減させます。薬には内服薬や貼り薬などがあります。
 神経ブロックは注射による治療で、特に痛みが強いときに有効です。
 そのほか、コルセットを装着する装具療法や牽引療法、理学療法などがあります。
 薬物療法以外にも、症状を楽にする目的でいろいろな治療法が試みられています。
 家庭で自分でできることとしては、体操療法も重要です。腰を支えている背筋や腹筋の筋力を維持することは、痛みの予防や軽減につながります。

保存的治療法
薬物療法 痛みを鎮める「消炎鎮痛薬」や筋肉のこりをほぐす「範弛緩薬」、傷んだ神経の修復を促すビタミン剤などが用いられる。内服薬のほか、貼り薬や塗り薬などの外用薬、坐薬、注射薬などがある。
神経ブロック 痛みが起こっている神経根の周囲に局所麻酔を注入する「硬膜外ブロック」や、神経根の周辺に直接局所麻酔を注射する「神経根ブロック」などの方法がある。特に痛みが強いときには効果的。
体操療法 腹筋や背筋を維持するために体操や運動を行う。また、腱や筋肉を伸ばすストレッチは関節の可動域を確保するためにも有効。毎日、あるいは定期的に行うとよい。ただし、痛みが強いときには行ってはいけない。
装具療法 腰に巻くコルセットを装用する。コルセットで無理な動きを制限して腰を保護するもの。硬くしっかりと固定するタイプと、動きやすい布製のやわらかいタィプがあるので、医師と相談して決めるとよい。
牽引療法 ベルトを巻いて、特殊な機械で腰椎を引っ張る治療法。引っ張ることによって、神経の圧迫を軽減して痛みを軽くする。家庭ではできないので医療機関で受ける。
理学療法 蓄熱剤の入ったホットパックや機械などで温める「温熱療法」、「マッサージ」や「電気療法」などがある。家庭で行えるものも多い。温熱療法は使い捨てカイロや温めたタオルで代用できる。電気療法は家庭用の低周波治療器で同様の治療が可能。
これらの治療法は根本的に治すものではありませんが、定期的に、あるいは痛みが強いときに治療を受けて痛みが楽になったり、患者さん本人が心地よく、効果を実感できるものなら行ってかまいません。

医療機関での手術療法

対症療法を行っても効果がなく、痛みが著しい場合や、背骨の状態によっては手術が必要になることがあります。例えば、変形によって脊柱管狭窄を引き起こし、神経への圧迫による強い症状が現れているときは、積極的な治療として手術も行われます。
 そのほか、椎間板ヘルニアすべり症を起こした場合も、症状によっては手術が必要となることがあります。

日常生活での対処法

 老化などで背骨の変形があり、慢性の腰痛を抱えている人は、ふだんの生活に注意して、腰痛を起こしたり悪化させないようにしましょう。日常の動作で腰に負担がかかりそうなことはなるべく避け、腰をいたわることを忘れないようにします。
 腰部脊椎症では、どのような姿勢や動作で痛みが現れるかがはっきりしています。一般的には体を反らせるときに痛むので、うつ伏せになって本を読んだり、高い所の物を取ろうとしたりすることで、痛みが起こることがよくあります。
 ただ、どのような姿勢や動作で痛みが現れるのかは、人によって異なります。自分にとって何がよくないのかを知ることが大切です。こうした姿勢や動作をしてはいけないわけではありませんが、痛みを起こさないためには、なるべく避けたほうがよいでしょう。
 また、重い物を持ち上げたり、前かがみの姿勢で作業を続けたりすることも、腰に負担をかけるので好ましくありません。
 ただ、腰に負担をかけまいとして安静にしすぎるのも問題です。できる範囲で、なるべく体を動かすように心がけましょう。体を動かすことで筋肉が強化されれば、それだけ腰にかかる負担を軽減することができます。なかでも水泳は、水の浮力で関節にあまり負担をかけずに筋力をアップさせることができるので、特に勧められます。
 肥満の人は体重の重みでさらに腰に負担がかかるので、適度な運動はダイエットのためにも必要です。運動で減量し、筋力もアップすれば、腰痛を予防したり、軽減することにもつながります。
 なお、腰痛などの症状は、心の健康状態とも密接な関係を持っています。ストレスをため込んでいるとき、悲観的になっているとき、後ろ向きの心理状態で生活しているときなどは、症状が強く出る傾向があるのです。ストレスをためないようにし、心の健康を保つことも大切です。

[トップ][戻る]