変形性膝関節症
部位膝関節 症状痛み
原因加齢変性 対処専門医の診断,運動療法

ひざの関節軟骨がすり減り、痛みなどが起こる。症状が進むとひざの曲げ伸ばしもしにくくなり、歩行や階段の上り下りも不自由になる。中高年の膝関節痛の原因として最も頻度が高い。内反変形(O脚)が多く歩行時に膝内側部が痛む。

変形性膝関節症の病理
膝関節

膝は、「大腿骨(太ももの骨。体のなかで最も太くて長い)」と、その下の「脛骨(脛の骨)」を連結する関節です。
 立ったり座ったりといった、日常動作でよく動かす膝の関節は、非常に複雑な構造をしています。
 大腿骨と脛骨は、主に4本の靭帯でつながり、その正面を、俗に膝のお皿″と呼ばれている「膝蓋骨」が覆っています。
 関節の部分では、骨と骨が直接ぶつかることはありません。大腿骨と脛骨が向き合う部分は、関節軟骨という弾力性のある組織で覆われていて、骨と骨の摩擦を少なくしています。
 さらに関節軟骨と関節軟骨の間に、「半月板」という組織があります。この半月板は、骨の先端を覆う関節軟骨とは少し組成の異なる軟骨です。半月板も、膝への衝撃を吸収するクッションの役を果たしています。
「変形性膝関節症」は、長い間膝関節を使った結果、大腿骨や脛骨の関節軟骨がすり減り、痛みなどの症状が現れる病気です。人によっては、関節軟骨だけでなく、半月板も損傷することがあります。
膝関節

原因
関節軟骨がすり減ってしまう最大の要因は、加齢です。長い間膝を使っていれば、それだけ摩耗しやすくなります。
 膝関節は、人体の関節のなかでも最も負担が大きい個所で、25歳くらいからすでに軟骨の摩耗が始まるといわれています。
 関節がぐらつかないよう、関節の周囲で支えている筋力の低下も、摩耗を促進させてしまう原因です。特に、運動不足で大腿四頭筋(太ももの大きな筋肉)が衰えていると、関節軟骨の摩耗が進みやすくなります。
 肥満も、膝に余計な負担をかけるため、関節軟骨の摩耗に影響を与えます。スポーツや農作業などで、膝を酷使している人や、膝の骨折、靭帯損傷などの外傷を負った人も、この病気を招きやすいといえます。
一方、生まれつき関節軟骨が弱いという、体質的な問題もあります。変形性膝関節症は、中高年以降に発症しやすくなりますが、はっきりした原因がないのに、50歳くらいの若い年代で発症する場合、体質的な要因があると考えられます。
 この病気は、3対1くらいの割合で、女性に多く見られます。女性は男性に比べ、筋力が弱いことが、要因と思われます。

変形性膝関節症の症状

膝関節の関節軟骨が摩耗してくると、次のような症状が現れてきます。

動かし始めにこわばる、痛む
最初に感じるのは、痛みというより、膝の関節がこわばったような感覚です。「何となく膝が重い」といった感じですが、それがだんだん痛みに変わってきます。
 痛みやこわばり感は、膝を動かし始めたときに生じます。
動作に伴って痛みが起こる
多くは、歩き始める、立ち上がる、階段を下り始めるなどの、膝を使う動作を始めるときに、痛みが生じます。歩くなどの動作をしばらくしていると、痛みはなくなります。
 しかし、症状が進行するに従い、歩いているうちに再び痛むようになります。やがては、常に痛みが持続するようになります。
膝に水がたまる
関節軟骨がすり減ると、関節軟骨のかけらが、関節を包んでいる「関節包」を刺激し、炎症が起きます。この炎症が、痛みを引き起こす原因です。
 一方、炎症が起こると、関節の動きをスムーズにしたり、関節軟骨に栄養を与えている関節液が過剰に分泌されます。その結果、いわゆる「膝に水がたまる」状態になります。
水がたまると、「膝蓋骨の上部が腫れたり、膝が重い、あるいは、膝がだるい」といった症状が現れます。
膝の曲げ伸ばしが制限される
症状が悪化すると、関節の動きが悪くなり、膝を曲げたり、伸ばしたりすることが難しくなります。膝が自由に動かせないので、歩行や階段の上り下りにも、不自由します。
夜間に痛む
進行すると、横になっていても膝が痛み、痛みのために夜中に目が覚めることもあります。トイレなどに起き、歩き始めると、さらに痛むのが、最もつらいと訴える患者さんも多いのです。

医療機関での診断

診断 膝が痛む病気はいろいろあるので、次のような検査を行って、ほかの病気と鑑別しながら、最終的に診断されます。

問診・診察
「どのようなときに、どのような痛みがあるのか、安静時にも痛みがあるか」など、症状について詳しく聞かれます。  また、膝の動き具合や、大腿骨と脛骨の並び具合などの外見をチェックされます。日本人はもともと膝関節の内側部分に体重がかかりやすく、内側の関節軟骨がすり減りやすくなります。すると、ますます内側に体重がかかる結果、膝が外側に曲がり、0脚になります。人によっては、反対に膝の外側に体重がかかり、X脚になることもあります。
画像検査
確定診断には、エックス線とMRI(磁気共鳴画像)による画像検査が有効です。
エックス線検査では、骨や関節の状態がわかります。変形性膝関節症では、関節軟骨がすり減って、骨と骨のすき間が狭くなっています。また、変形に伴って現れる、「骨棘」と呼ばれる、棘のような新しい骨を、確認することができます。
 ただ、エックス線撮影では、関節軟骨や関節包、筋肉などは写りません。そのため確定診断には、MRI検査が必要になります。MRI検査の画像では、関節内の炎症や半月板の損傷の様子などが確認できます。
 そのほか、慢性関節リウマチや痛風などとの鑑別診断のために、血液検査も行われます。

医療機関での保存的治療法

保存療法(非手術療法)で、日常生活に支障が起きないように症状を改善していきます。具体的には、次のような方法があります。

筋力訓練
筋力を鍛えて、膝を支える力を強めることで、痛みなどの症状を改善します。膝が痛いと、どうしても運動を避けてしまいますが、運動不足になると筋力が弱り、ますます関節の動きが悪くなってしまいます。少し痛みがあっても、積極的に運動すると、痛みが和らいだり、膝にたまった水の排泄が促されます。  効果的なのは、大腿四頭筋の筋力訓練です。太ももの前面の筋肉だけでなく、膝を曲げるときに働く、太ももの裏側の筋肉や、関節の周囲にある筋肉も鍛えられます。足首に1s短程度のおもりをつけ、朝晩10回くらい行うと、効果が得られます。ただし、おもりが垂すぎると膝に負担がかかるので、注意が必要です。
可動域改善訓練
座った状態で、膝を曲げたり伸ばしたりする動作を繰り返し、関節が動かせる範囲(可動域)を広げていきます。関節軟骨のすり減る部分が1か所に偏るのを防ぐ目的もあります。膝が伸びなければ、ストレッチング体操のように、手で押して、膝を伸ばします。少し痛みを感じる程度まで伸ばし、それ以上は曲げたり伸ばしたりしないようにします。
薬物療法
 筋力訓練などを行っても、痛みが改善されないときは、薬を用います。
非ステロイド性消炎鎮痛薬
関節内の炎症を抑えて、痛みを軽くします。内服薬と、膝に塗る外用薬があります。
ヒアルロン酸ナトリウムの注入
ヒアルロン酸ナトリウムは、関節液に含まれている成分の1つで、すり減った関節軟骨を修復したり、保護する働きをしています。  このヒアルロン酸ナトリウムを、1週間にl回、関節内に注入します。最初は5週続けて行い、その後は症状の改善の程度に応じて、月に数回注入するのが一般的です。  この治療法は、初期から中期にかけての病状には効果的ですが、関節軟骨や半月板の損傷が激しい場合には、あまり効きません。
 症状がたいへん重く、早急に痛みをとらなくてはならない場合には、ステロイド薬を注入することもあります。
温熱療法
炎症があると、血液循環が悪くなり、ますます痛みが強くなります。そこで、ホットパック(ジェル状の温熱剤が入ったパック)や電気療法などで、膝を温めて血行をよくし、症状を改善します。
装具の使用
膝関節が変形すると、関節の一部に負担がかかり、痛みが生じます。そこで、膝への負担が均一になるよう、装具を使います。
 例えば、「足底板」という矯正装具を、足の底につけます。O脚になっている場合、外側部分が厚くなった足底板をつけることで、体重を関節の外側でも支えられるようになり、痛みも軽減します。
 大腿四頭筋が衰え、膝が横ずれしてしまう場合には、サポーターをつけて、膝を安定させます。
 これらの装具は、就寝時と入浴時以外は、常に装着しておきます。
 装具には健康保険が適用されています。どのような装具を用いるか、医師とよく相談し、自分に合ったものを購入してください。

医療機関での手術療法

患者さんのほとんどは、保存療法を行うことで、症状が軽くなります。
 しかし、関節軟骨の変形が進んでいる場合、保存療法だけでは痛みがとれないこともあります。そのようなときは、手術が検討されます。
 痛みのために日常生活に支障を来すようであれば、担当医とよく相談して、手術を受けるかどうか決めてください。
 手術には、次のような方法があります。

関節鏡視下手術
「関節軟骨面がけば立つ、骨棘ができる、半月板が断裂する」などが原因で、痛みが生じる場合があります。このようなときは、保存療法ではなかなか痛みがとれないので、痛みの原因を取り除く手術が有効です。
 関節鏡視下手術は、「関節鏡」という内視鏡を用いて行う手術です。膝に直径7mm皿ほどのあな孔を3〜4か所開け、関節鏡や手術器具を関節に入れます。そして、関節鏡で関節内の様子を見ながら、骨棘や損傷した半月板を取り除きます。
 膝を大きく切開する必要がないので、患者さんにとって身体的負担が少なくてすみます。手術に要する時間も、1〜3時間程度と短く、翌日から歩くことができます。
O脚変形矯正手術
O脚があると、関節の内側にますます負担がかかり、変形が進んでしまう可能性があります。このような場合は、0脚を矯正する手術が行われます。  この手術では、脛骨の一部を楔形に切り取り、体重が外側にかかるよう、脛骨の軸を矯正します。
人工関節置換手術
膝関節の変形が高度に進んでいる場合は、人工関節に入れ替える手術が検討されます。  変形している片膝の半分だけ入れ替える方法もありますが、重度の場合は、膝関節全体を人工関節に入れ替える必要があります。  入院期間は、リハビリテーションも含め、l〜2か月です。

日常生活での対処法

日常生活では、できるだけ体を動かして、筋肉を鍛えておくことが大切です。
 筋力をつける運動には、ウオーキングが最適です。前述した筋力訓練と並行して、ふだんからなるべくよく歩くようにします。歩くときは、膝への衝撃をできるだけ軽くするために、底の厚い靴を履きましょう。
 多少痛くても、歩いたほうがよいのですが、明日に疲れを残さない程度にしておきます。無理は禁物です。特に、関節軟骨の弱い人は、あまり激しく運動しないほうがよいでしょう。
 ちなみに、歩いたり走ったりするときは、道路端の傾斜に注意します。傾斜の低い側に変形が起きている足を置くと、膝の内側にかかる負担が大きくなり、痛みを強めたり、病気の進行を早めてしまいます。
 太っている人は、減量を心がけて、膝への負担を軽くすることも大切です。歩くとき、膝には体重の数倍の荷重がかかります。1s体重を減らすだけで、片膝にかかる負担は3〜5sも少なくなるといわれます。そのため、体重を減らしただけで、痛みが軽くなることもあります。
 また、膝はできるだけ冷やさないようにします。冷えると、血液循環が悪くなって、痛みを誘発します。サポーターをしたり、膝掛けをするなどで、膝の保温も心がけてください。
 この病気では、歩き始めに痛みが生じます。特に、朝起きて活動を始めるときに、痛むことが多いものです。そこで朝は、温かい布団の中で、10回ほど膝の屈伸をしてから、起き上がるとよいでしょう。ウオーミングアップしてから膝を使うと、歩き出したときの痛みが軽くなります。
 以上のようなことに留意して、自分の膝とうまくつき合っていきましょう。

水を抜く治療の効果は?
 治療の一環として、膝にたまった水を、注射器で抜くことがあります。「痛風」が疑われるときには、たまった水の成分を調べて、痛風の原因である「尿酸結晶」の有無を検査することもあります。また、水を抜くと同時に、ヒアルロン酸ナトリウムを注入することもあります。
 この膝の水、すなわち「関節液」は、軟骨の主成分であるたんぱく質を分解する酵素や、痛みを誘発する物質を含んでいます。そのため、関節液の量が多くなると、関節を覆っている関節包が引き伸ばされて、痛みが生じてくるのです。たまった水を抜くだけで、痛みは軽くなりますが、やがてまた関節液がたまって、痛みも再び生じてきます。
 水がたまるのは、軟骨のかけらが関節を刺激して、炎症が起きているからです。したがって、炎症が治まらないかぎり、関節液は過剰に分泌されてしまいます。
 よく、「水を抜くとクセになる」といいます。しかし、クセになるのではなく、一時的に腫れや痛みがとれるだけなのです。炎症を起こしている原因を正しく診断し、治療することが大切です。

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