リウマチ性脊椎炎

関節リウマチが進行して、それが脊椎で起こるのが「リウマチ性脊椎炎」です。ときに重篤な事態を招くこともあるため、首の異常や危険な兆候には注意が必要です。

部位頭頚部 症状痙性麻痺
原因炎症性 対処専門医の診断
リウマチ性脊椎炎の病理

関節リウマチは「自己免疫疾患」の1つで、患者さんの多くは女性です。自己免疫疾患とは、免疫機能の異常により、自分の体の組織を外敵とみなして攻撃してしまうために起こる病気です。関節リウマチでは、関節が攻撃対象となります。
 関節リウマチでは関節の「滑膜」が攻撃を受けて炎症を起こし、関節が徐々に破壊されていきます。滑膜は、関節を包んでいる関節包の内側にある膜で、関節液を産生し、関節のなめらかな動きを助けています。
 炎症は手指の関節から始まり、進行するに従って全身の関節に及びます。この炎症が脊椎に起こったものを「リウマチ性脊椎炎」といいます。リウマチ性脊椎炎は、関節リウマチの進行した患者さんに起こりやすく、約半数に発生していることがわかっています。
 関節リウマチには破壊関節が少ない「単関節型」や破壊関節が多い「多関節型」、手指などの骨が破壊されやすく軟部組織が傷む「ムチランス型」に分けられますが、リウマチ性脊椎炎は多関節型とムチランス型の人に起こりやすく・また、脊椎のなかでも半数以上が上位頚椎(頚椎上部)に起ります。

環軸関節亜脱臼
リウマチの炎症は滑膜に起こります。頚椎椎間関節は滑膜関節ですが、特に「環軸関節」にこの病態が最も強く現れます。環軸関節は、第1頚椎(環椎)と第2頚椎(軸椎)から成る1番上の関節で、頭部を支える重要な部位です。
炎症によって環軸関節を取り巻く関節包がゆるんだり、周辺の骨が破壊されたり、つぶれることがあります。特に問題となるのは、環椎を支える軸椎の突起(軸椎歯突起)が細くなったり祈れたりすると、環椎が前方あるいは後方へずれて亜脱臼してしまうことです。そのほか、炎症が進んで滑膜が増殖すると腫れて大きくなり、脊髄を圧迫することもあります。
中下位頸椎の病変
中には第3頸椎より下の中下位頸椎に起こる場合もあります。中下位頸椎に起こった場合は、上位頸椎とは病変が多少異なります。中下位頸椎に炎症が及ぶと、頸椎の椎体や椎間板に異常が見られます。炎症によって椎体の緑が侵食されたり、椎体の圧迫骨折や破裂骨折が起こったり、椎体と椎体の間が狭くなります。また、複数の頸椎が亜脱臼を起こしたり、椎間板内や椎体内に結節ができるものもあります。
 

これらの病変が複数合併したものや、進行性のあるものも認められています。加えて、加齢やリウマチの薬物療法の影響で増悪することがあり、重症のものでは脊髄麻痺を引き起こす場合もあります。
 こうした病変の進行には、リウマチ自体の悪化が深く関係していると考えられています。リウマチの症状が鎮静化してくると、頸椎に起こった病変も進行が止まることが明らかになっています。

リウマチ性脊椎炎の症状

関節リウマチになると関節に腫れと痛みが現れますが、頚椎が障害された場合の症状は、首から後頭部にかけての鈍い痛みや運動制限などです。最初のうちは疲れたときだけ現れますが、進行すると常に痛みが起こるようになります。首を前後に曲げたり、回すときに特に痛みが強くなり、しだいに動かしにくくなってきます。
 頚椎の亜脱臼や骨破壊で骨がずれたり、滑膜が増殖すると、脊髄への圧迫による症状が出ることも少なくありません。手足のしびれやこわばり、歩行障害などです。文字が書けない、薯が持てないなど、手指の細かい動作ができなくなることもあります。
 さらに、上位頚椎に炎症が起こった場合は、位置が脳に近いことから、下位脳神経や延髄に影響が及ぶことがあります。
 下位脳神経には顔面神経や舌下神経、舌咽神経などが集中しているため、めまいや舌がもつれるなどの下位脳神健症状が現れます。
 特に注意を要するのが延髄圧迫症状です。延髄は、呼吸や心拍など、生命維持に不可欠な機能を維持する役割を担っています。そのため延髄麻痺が起こると、突然死の危険があります。呼吸が苦しい、心臓がドキドキするというような症状が出たときは、緊急手術が必要となります。
 ほかに、ずれた頚椎によって椎骨脳底動脈が圧迫されて血流が阻害されると「椎骨脳底動脈不全」を起こすこともあります。ひどいめまいや立ちくらみなどの症状が出たときは、椎骨脳底動脈不全が疑われます。

脊髄や延髄を圧迫すると重篤な症状が現れる
下位延髄圧迫症状 舌がもつれる 飲み込みにくい 顔半分がしびれる めまい 頭痛
脊髄圧迫症状 呼吸が苦しい 陶がドキドキする
下位脳神経症状 手のしびれ・こわばり・細かい作業ができない 脚のしびれ・脱力、歩行障害
医療機関での診断

関節リウマチの患者さんの多くは、長期間にわたって定期的に受診し、治療と経過観察を続ける必要があります。この経過観察において、背骨の状態を確認することは必須です。何らかの症状があった場合はもちろん、ないときでも定期的に検査を受けて経過を観察することが大切です。
 検査ではエックス線検査が重要です。撮影は通常の正面、側面のほか、首の前屈・後屈姿勢で行います。正面像では、口を開けた状態で撮影すると、あごの骨が重ならないため、上位頚椎の状態がよくわかります。側面像は、環軸関節の左右へのずれや脱臼を確認するのに有効です。また、軸椎の歯突起と環椎の後ろ側の部分(後弓)との間隔を測定して、脊髄圧迫症状が発生しそうかどうかの予測をします。首の前屈・後屈姿勢での撮影も、亜脱臼や歯突起の骨折などの発見に効果的です。
 エックス線検査の結果、亜脱臼などの異常が見られる場合は、さらに詳しい検査が必要です。エックス線では神経、脊髄、延髄への圧迫がわからないので、MRI検査を行います。また、頚椎の骨破壊を調べる場合はCT検査が有効です。
 さらに、上位頚椎に障害が起こった場合に現れる、めまいや舌がもつれる、手足が麻痺するといった症状は、脳卒中などの脳神経疾患と判別がつかないこともあります。鑑別のために脳神経内科など、ほかの診療科と連携して検査を行います。

症状が首や後頭部の痛みだけの場合は、保存療法で様子を見ます。しかし、脊髄や延髄の圧迫症状が現れた場合は、手術が必要になります。

医療機関での保存的治療法

保存療法の中心は薬物療法です。非ステロイド性消炎鎮痛薬やステロイド薬などで痛みや腫れ、炎症を抑えます。抗リウマチ薬を併用し、関節リウマチ自体の進行を抑えることも大切です。
 炎症が激しく、腫れや痛みが強いときには、ステロイド薬を注射する「ブロック療法」を行います。痛みが強いところに直接注射したり、大後頭神経ブロック、環軸椎間関節ブロックなどの方法があります。
 装具療法としては頚椎カラーを装用して、頚椎にかかる負担を軽減します。牽引療法は、頚椎のずれや神経の圧迫を一時的に整復して症状を改善する方法です。どちらも脱臼や骨の破壊を治す手段ではありませんが、痛みをやわらげるのに有効です。

医療機関での手術療法

保存療法を行っても効果が得られず、生活に支障をきたすような場合や、進行して亜脱臼や骨の破壊によって骨の位置がずれ、脊髄や延髄を圧迫しているときには手術が必要です。特に、延髄の圧迫は命にかかわることもあるため、緊急を要します。
 手術の方法は、脊髄や延髄を圧迫している骨の位置を整復して固定する「除圧・脊椎固定術」が一般的です。固定するためにはロッドやワイヤー、ボルト、プレートなどの器具を用います。
 頚椎が前後にずれている場合は、整復してからワイヤーやボルトで固定します。頚椎が左右にずれている場合は、後頭骨と頚椎を太いボルトを使って固足します。
 術後は、関節を固定したため首が動かなくなったり、動きが制限されますが、日常生活にほとんど支障はありません。何よりも麻痺や痛みが改善され、延髄圧迫による突然死などの危険も回避できます。

日常生活での対処法

骨のずれや亜脱臼があるときは、頚椎は不安定な状態にあります。首に強い衝撃が加わって頚椎がダメージを受けると、骨に異常が起こるだけではすみません。脊髄症状が現れたり、延髄症状によって生命に危険が及ぶこともあるのです。
 日常生活では転倒したり、頭をぶつけたりしないように細心の注意をはらいます。リウマチ体操や軽い運動をするときでも、急激に首を動かしたり、強い力で首を押したりしないようにしてください。

セカンド・オピニオン

頸椎の手術が必要になった場合、不安を感じるのは当然のことです。しかし、単に手術が嫌だからと避けていると、手術の時機を逸してしまうことにもなりかねません。
 確かに、頸椎の手術は簡単な手術ではありません。熟練した専門医のもとで受けることが最善です。不安や納得いかない点があるなら、セカンド・オピニオンも求めて、複数の医師の意見を聞き、できる限り正しい知識をもったうえで判断してください。
 また、日本脊椎脊髄病学会ではホームページ上で脊椎脊髄外科指導医を紹介しています。専門医を探すには、こうした情報を利用するのも良いでしょう(http://www.jssr.gr.jp/jssr_web/html/sick/index.html)。

[トップ][戻る]