頚肩腕症候群、いわゆる「肩こり」

「頸肩腕症候群」とは、その名が示すように、首から肩、腕にかけて痛みやこりが起こる病気の総称です。通常、特に原因となる病気がないものをいい、治療は、こりをほぐしたり、筋力アップをはかります。

部位首から肩、腕 症状痛みやこり
原因筋肉の疲労 対策こりをほぐしたり、筋力アップ
頚肩腕症候群、いわゆる肩こりの症状

「肩がこる、首が痛い」といった症状は多くの人が経験したことがあるでしょう。こうした症状や、首から肩、腕にかけての痛みやこり、しびれ、といった不快な症状を引き起こす病気を、総称して「頚肩腕症候群」と呼んでいます。

ただ、そうした症状は「頚部脊椎症」「胸郭出口症候群」などのさまざまな病気が原因で起きるので、通常はもととなる病気がわかった段階で、その病名で呼ばれます。そのため、現在では頚肩腕症候群は、いわゆる「肩こり」のように、特に原因となる病気がはっきりしない場合を指しています。

ただし、「長期間、いつも同じ場所が痛む、痛みが徐々に強くなる、指にまで痛みが走る(放散痛)」という場合は、背後に病気があることが多いので、注意が必要です。

頚椎症頚椎椎間板ヘルニア胸郭出口症候群、高血圧、狭心症や心筋梗塞の心臓病、自律神経失調症、更年期障害、眼精疲労などの可能性が考えられます。

頚肩腕症候群、いわゆる肩こりの原因

肩こりは、簡単にいえば、「肩周辺の筋肉の疲労」です。首から肩、背中にかけては、「僧帽筋」や「肩甲挙筋」、「棘下筋」、「菱形筋」などの筋肉がありますが、これらの筋肉が常に緊張していると、筋肉が収縮して硬くなり、血管が圧迫されて血行が悪くなります。すると、「乳酸」などの疲労物質が筋肉の中にたまって、痛みやこりの症状を引き起こすのです。さらに、痛みなどがあると、筋肉を動かさなくなるので、余計に筋肉が収縮して痛みも増す、という悪循環に陥ります。

筋肉の緊張を起こさせ、疲労させるいちばんの要因は、パソコン作業やデスクワークなどで長時聞同じ姿勢をとり続けることです。

また、もともと体型がなで肩の人や首が細く長い人は、首や肩周辺の頭を支える筋肉が弱いことが多く、筋肉への負担が大きくなるため、こりやすいといえます。男性よりも筋力の弱い女性に多いことからも、頭を支える筋力の強さも影響大といえるでしょう。運動不足の人も筋肉が弱いものです。

季節的には、冬は寒さのために、血行が悪くなって、一屑こりが起こりやすくなります。 そのほか、精神的なストレスも肩の筋肉を緊張させます。

肩こりは、このような原因で起こるので、働き盛りの青壮年期の人、なかでもコンピュータ作業やデスクワークをしている人がなりやすいといえます。 性別では、女性が多いようです。女性は男性に比べ、なで肩で筋力が弱い人が多いからです。

医療機関での診断

医療機関では、まず、肩こりの症状が病気によって引き起こされているものかどうかを調べます。

問診
「どこが痛むのか、左右の肩が痛むのか、いつから症状があるのか、痛みは強くなっているのか、腕をひねった、ぶつけた″などの原因はあるか、指が動かしにくい″などの随伴症状はあるか」といったことが尋ねられます。
 これにより、「単なる肩こりなのか、何か病気が隠されているのかどうか」の見当がつけられます。
診察
腕を動かしたり、首や肩の一部(圧痛点)を押して、痛みの程度を調べられます。
さらに、「知覚まひ」があるかどうかの検査も行われます。神経根の障害の有無を見るため、ジャクソンテストやスパーリングテストが行われます。
 これらのテストを受けて、痛みが強まったり、放散痛が出るなどした場合は、頚椎や椎間板、神経系などの病気が疑われます。
画像診断
たいていは問診と診察で肩こりか、ほかの病気かはわかります。しかし、原因がはっきりしない場合には、頚椎のエックス線検査が行われ、骨に異常がないかどうかが調べられます。エックス線検査では、「首の骨の弯曲状態が正常かどうか、なで肩かどうか」ということもわかるので、肩こりの鑑別診断としても行われています。
 また、病気が疑われた場合には、MRI(磁気共鳴画像)検査が行われることもあります。
医療機関での保存的治療法

肩こりがひどいときには、医療機関で治療を行います。主に次のような方法があります。

温熱療法
ホットパック(ジェル状の温熱剤が入ったパック)や電気治療器を症状のある部分に当てて、肩の筋肉を温めます。そうすることで血行がよくなり、疲労物質が排出されるので、症状も和らぎます。
また、家庭でも継続して患部の血行をよくするために、温湿布や冷湿布が処方されることもあります。
 温湿布は、すぐに温かさを感じ、血行を促進しますが、人によっては皮膚がかぶれやすいこともあります。
 冷湿布は、患部を冷やすので逆効果のようですが、刺激を与えることにより血行をよくするので、効果はほぼ同じです。湿布は5〜6時間たったら外して、少し時間をあけてから新しいものを貼ります。1日2回の使用が適当です。
薬物療法
消炎鎮痛薬や筋弛緩薬などを服用します。
消炎鎮痛薬には痛みを抑える効果があり、筋弛緩薬には筋肉の緊張をほぐす効果と軽い鎮静作用があります。だいたい1〜2週間、服用を続けます。
 また、精神的なストレスが強い患者さんには、鎮静作用の強い薬が処方されることもあります。
ブロック療法
同じ場所が強くこっている場合には、ブロック療法も適しています。これは、僧帽筋に沿った圧痛点に麻酔薬を注射することで、痛みなどの症状をとる治療法です。注射後は症状が解消されるので気持ちがよいのですが、効果が長続きしないのが難点です。
 これらの治療は、あくまでも症状を軽減させるもので、根本的な治療ではありません。
 ある程度症状が改善したら、リハビリテーション(肩こり体操など)を行って、肩こりそのものを治していくことが大切です。

日常生活での対処法

検査によって、特定の病気が原因でないことがわかったら、肩こりを招いたこれまでの生活を、改善するようにしましょう。

姿勢を正し、同じ姿勢を続けない
 デスクワークでは、前かがみの姿勢をとり続けたり、パソコン操作では背中を丸めて斜め上を見続けたりしがちですが、こうした姿勢では頭の重みが首や肩などの一部に集中してかかってしまいます。
 ですから、できるだけ正しい姿勢をとることが大事です。また、同じ姿勢をとり続けることもよくありません。こまめに姿勢を変えたり、時々、軽い運動をするようにしましょう。

肩こり体操を行う
 肩こりを治すには、体を動かすことが効果的です。肩が痛いと動かしたがらない人も多いのですが、積極的に体を動かすことで症状も軽くなります。医療機関では、理学療法士が「肩こり体操」などを指導しているので、指導を受けるとよいでしょう。
 運動の方法には、「ストレッチング」「等尺性運動」「筋力トレーニング」があります。1日2〜3回、1回につき5〜10分くらい行うと効果的です。
 また、テレビ、ラジオ体操もよいでしょう。首や肩だけでなく全身のストレッチングになります。これも1日に1〜2回行います。

入浴などで温める
 肩の血行をよくするためには、入浴も効果があります。肩がこっているときには、いつもより少し長い時間、ゆったりとつかるとよいでしょう。
 最近は「半身浴(下半身だけつかること)」が健康のためによいといわれていますが、肩こりの場合は、肩まで湯につかって、肩周辺の筋肉を温めてください。

マッサージなどを受ける
 肩こりがひどいと、「マッサージ」を受けたくなります。マッサージを受ければ、こっていた筋肉がほぐれるので、確かに気特がよいものです。鍼治療も、受けた後は痛みが楽になる人もいるでしょう。
 しかし、これらは一時的に症状を楽にするもので、肩こりを根本から治すものではありません。その点を理解して受けてください。
 また、マッサージは、強い力でたたいたり、もんだりするものではなく、筋肉を優しくさするような感じのものがよいでしょう。

頚肩腕症候群、いわゆる肩こりの予防法

肩こりは病気ではないとはいえ、なってしまえばつらいものです。ですから、予防するにこしたことはありません。次の点に注意してください。

肩周辺の筋肉を鍛える
 運動をして首や肩の筋力を強化すれば、肩こりは起こりにくくなります。肩こり体操は自宅で手軽にできるので、ぜひ継続して行ってください。また、水泳などの全身を使う運動は、筋肉を鍛えるほか、ストレス解消にもつながるので、お勧めです。
 注意したいのは、首を回しながらバキバキと音を立てている人です。強すぎる運動は関節を傷めてしまうので、やめましょう。
肩こりの原因を避ける
 自分の生活習慣を見直して、肩こりの原因となるものは改善していくようにします。例えば、長時間同じ姿勢で仕事をしている人であれば、できるだけ正しい姿勢を心がけて、なおかつ、時々休憩を挟んで軽いストレッチングなどをするとよいでしょう。
 また、ショルダーバッグを使っている人は、かけている側の筋肉を無意識に緊張させてしまうので、肩こりが起きやすくなります。時時かける肩を換えたり、両肩で背負うようなバッグを使うとよいでしょう。

そのほか日常生活で改善できる点をまとめてあるので、参考にしてください。

日常生活での注意
1.日ごろから体を動かすようにする
 運動不足は肩こりのもと。寝る前にストレッチングをするなど、体を動かす習慣を。
2.正しい姿勢をする
 猫背など、悪い姿勢を続けると、頭を支える首や肩の筋肉に負担がかかる。
3.ショルダーバッグやハイヒールは避ける
 片方の肩にかけるショルダーバッグやヒールの高い靴は体のバランスを崩すため、避ける。
4.休憩をとる
 デスクワークなどでは、同じ姿勢を続けがち。1時間に1回は休憩をとり、肩を動かす。
5.ストレスをためない
 ストレスのために体が緊張し、肩こりの原因となることも。ストレスはこまめに発散を。
6.枕は自分に合った高さのものを使う
 枕が高すぎたり、低すぎないようにする。首の曲線に合ったものを選ぶ。

[トップ][戻る]