病気が原因の肩こり

肩こりや首の痛みなどが起こる病気を原因別に大別すると、加齢性(変性)外傷性腫瘍性炎症性の順に多く、特に高齢者では、加齢性の病気が断然多くなります。


何らかの病気の症状としての「肩こり」「首の痛み」

「肩こり」「首の痛み」は、日常よくある訴えですが、そのなかには背骨の首の部分にあたる頚椎の病気が原因になっているものがあります。頚椎に重大な障害が起これば、手足の感覚や運動まで麻痺させることがあるので、あなどれません。

若い女性で肩のこりと、首のこりを伴う場合は、「胸郭出口症候群」が疑われます。胸郭出口症候群では、血行障害を起こし、手の冷えやしびれなどが現れることもあります。

五十屑(肩関節周囲炎)」のような肩関節の問題の場合は、手を上げるなど関節を動かすと痛むのに対し、腕にもしびれ、痛みなどがある場合は、原因が頚椎にある可能性が高いといえます。

頚椎に原因があるものでは、加齢に伴って起こる「頚椎症」が最も多く、症状としては、「後頚部(首の後ろ)や首、肩のこり、痛み、不快感」などが主体です。「首が動かしにくい、動かすと痛い、姿勢が悪い」なども生じます。症状に起伏があり、睡眠不足、ストレスなどで悪化します。また、上を向くような姿勢(頚椎の後屈)を続けると痛むことが多くなります。

関節リウマチのある人では「リウマチ性脊椎炎」、糖尿病のある人では「化膿性脊椎炎」、血液透析を行っている人では「破壊性脊椎症」、がんの既往のある人では「転移性脊椎腫瘍」なども考える必要があります。

肩のこりに加えて、肩の痛みや頭痛などを伴うこともあります。そうした場合には、高血圧や緊張型頭痛が疑われます。

1.加齢性(変性)疾患

主な病気には、椎間板変性や椎骨の変形などによる「頚椎症」や椎間板の中身が飛び出す「頸椎椎間板ヘルニア」、背骨をつないでいる靭帯が厚く骨のようになる「脊柱靭帯骨化症」などがあります。

加齢変化に伴って起こる病気で当然、高齢者に多いのですが、症状のない50歳代の人でも、エックス線検査を行うと、70%以上に何らかの加齢変化が見られます。

ヒトは視覚に頼る動物であり、視覚情報を得るために、頚椎は背骨のなかでも最も多様で広範囲、そして高頻度の動きをしています。それが、椎間板、椎間関節、靭帯など動く部分に負担をかけ、特に椎間板を中心に加齢変化を生じやすくしています。

肋骨とつながって胸郭を形成する胸椎は運動性が低く、加齢変化が少ないため、胸椎症や胸椎椎間板ヘルニアはまれです。

特に重大な病気関わるのが,「頚椎症」です。

1.1「頚椎症」の神経根症状

頚椎の病気で最初に現れるのは、通常、後頚部や首、肩のこり、痛み、不快感などでこうした局所症状を「脊柱症状」といいます。これらは、椎骨・椎間関節。椎間板・靭帯などのさまざまな具合の悪さに基づく症状です。症状の現れる順序は、通常、「首→手→脚→排尿」ですが、首の痛みをよくある肩こりと思っていて、手の動きが不自由になったり、歩きにくくなって、初めて受診するケースも少なくありません。

一方、手足のしびれ、感覚が鈍くなるなどの感覚系の障害、手指の動きがぎこちなくなる、脱力、歩行困難などの運動系の障害、そして排尿系の障害などは「神経症状」で、背骨の中央を通る脊柱管内にある脊髄や、出入りする神経根が圧迫されたりするために起こります。
「頚椎症」などで椎間板や椎骨が変形したり、「椎間板ヘルニア」で椎間板の中身が飛び出したり、「後縦靭帯骨化症」で靭帯が厚く硬くなったりすると、脊柱管内へ突出した軟骨や骨が脊髄を圧迫したり、神経根の通る孔が狭くなって神経根を圧迫し、こうした症状を引き起こす原因になります。

私たちが手を伸ばして物に触れ、冷たいと感じたりするとき、その運動や感覚を司る神経は、頚椎から出ています。手や腕の動きがおかしい、感覚が鈍いという場合、その原因は、神経の出ている頚椎にあることが少なくありません。手の痛みであっても、首の動きに伴って痛みが走るときは、頚椎に原因のある可能性が高いといえます。

 

頚椎から出る神経根の障害による症状(神経根症状)としては、通常、片側の肩から腕へ走るような痛み(放散痛)、しびれが主で、ときに力が抜けるなどと感じます。

頸椎から出ている神経根が障害されると、そこから伸びる神経がかかわっている特定の領域に、感覚、運動などの異常が起こります。

第3・第4頚神経根に障害が起こると 呼吸がしにくい
第5頚神経根に障害が起こると 感覚の異常ひじを曲げられない腕を上げられない
第6頚神経根に障害が起こると 手首を上に反らせることができない、感覚の異常
第7頚神経根に障害が起こると 肘を伸ばせない、感覚の異常
第8頚神経根に障害が起こると 手の指を握れない、感覚の異常
第1胸神経根に障害が起こると 手の指を広げられない、感覚の異常

神経根の障害を招いた原因が違う病気であっても、同じ神経根に問題があれば、同様の症状が現れます。

 

ただし、しびれや脱力が両側の広い範囲に及ぶ場合は、次に述べる脊髄の障害を疑う必要があります。

1.2 見過ごせない脊髄障害を疑わせる症状

頚椎に起きた病気が招く症状で、神経根障害による症状よりさらに重大な問題となるのが、脊髄障害の症状です。

私たちの手は、日ごろ繊細な感覚をもち、最も複雑で精密な動きをしています。頚椎部で脊髄が障害されると、両手指のしびれに加え、手指の動きがぎこちなくなるという症状がよく現れます。特にボタンの掛けはずし、箸の扱い、針仕事、書字などの細かい手指の動作が障害されやすくなります(巧赦運動障害)。さらに、脚のしびれ、歩行困難、排尿障害などに発展します。

手指の動きがぎこちない
ボタンの掛けはずしがうまくできない、字が書きにくくなった、箸がうまく使えない、紐が結べない、小銭がなかなかつまめない
歩行障害
つまずきやすい、速歩きができない、階段の上り下りが困難、重症になると歩けなくなる。
 
尿の症状
尿が出にくい・勢いがない、残尿感、頻尿、尿もれ、失禁など。
        

脊髄障害が長く続くと、回復が難しくなり、手術をしても症状が残りやすくなります。上のような症状に気づいたら、頚椎の重大な病気を疑う必要があります。

自分でできるチェック
2.外傷性疾患

背骨のなかでも頚椎は事故などによる外傷が起こりやすく、頭部の外傷に伴うことがよくあります。頚椎の骨折・脱臼では、脊髄損傷が起こりやすく、胸椎では、肺、肝臓、大血管などの損傷も合併しやすいので、緊急の対処が必要です。

3.腫瘍性疾患

神経系の「脊髄腫瘍」と骨格系の「脊椎腫瘍」に大きく分けられます。脊髄腫瘍は大部分が良性ですが、四肢の運動・感覚麻痺を生ずるため、手術が必要となります。脊椎腫瘍で最も多いのは「転移性脊椎腫瘍」です。背骨や骨盤はがんの骨転移が多い部位で、消化器・呼吸器などのがんの病歴のある人は特に注意を要します。

背骨や脊髄にできる腫瘍、ほかの部位に生じたがんの転移によって起こるもの。
4.炎症性疾患

細菌感染による「化膿性脊椎炎」と、「関節リウマチ」などによる非細菌性炎症に大別されます。化膿性炎症は、通常、全身が衰弱したり免疫機能が低下した状態の人に生じ、「感染性脊椎炎」を起こします。非細菌性炎症としては、「リウマチ性脊椎炎」「強直性脊椎炎」などの病気があります。

細菌感染や関節リウマチなどによる炎症によって起こるもの。
5.その他

骨粗鬆症」により、背中が丸くなったり、腎不全で血液透析を行っている人の「破壊性脊椎症」では頚椎に亜脱臼などが起こることもあります。また、背骨が異常に曲がる「脊柱の弯曲異常」、頚椎・胸椎の形成不全などの「先天性疾患」も起こります。

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